「HACCP(ハサップ)って、ほっともっとでも本当にやらなきゃダメなんですか?」
先日、知り合いのオーナーからこんな質問をされました。名前は聞いたことがあるけれど、何をどこまでやればいいのかよく分からない——という方は多いと思います。私も最初は「大きな工場の話でしょ?」くらいに思っていました(笑)。
結論から言うと、ほっともっとの店舗もHACCPの対象です。ただ、身構えるほど大げさなことをやるわけではありません。今回は制度の位置づけと、残暑が続くこの時期にこそ見直しておきたい衛生管理のポイントを整理してみます。
HACCPは2021年から「義務」になっています

食品衛生法の改正で、2021年6月から、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられました。飲食店も、お弁当屋さんも、例外ではありません。「うちは小規模だから関係ない」ということはないんです。
ただし、規模に応じて2つのやり方が用意されています。大規模な工場などが行う本格的な「HACCPに基づく衛生管理」と、小規模な飲食店向けの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」です。ほっともっとの店舗は後者にあたります。こちらは、業界団体がつくった手引書をもとに、簡略化されたかたちで取り組めばよいことになっています。
💡 HACCPそのものに直接の罰金はありません
ただし、衛生管理計画をつくっていない・記録がまったくない、という状態が続くと、保健所の指導の対象になります。改善されなければ営業停止などの行政処分につながることもありますし、営業許可の更新時にも確認されます。「やっていない」で通せるものではない、と考えておいてください。
ほっともっとの店舗でやることは、実はシンプル
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でやることは、大きく3つだけです。
- ① 衛生管理計画をつくる:手洗い、冷蔵・冷凍庫の温度確認、器具の洗浄消毒、加熱の温度、クルーの体調確認など、「いつ・何を・どうやって・問題があったらどうするか」を決めて紙にまとめる
- ② 計画どおりに実施して、記録をつける:毎日のチェック表に「できた/できなかった」を残す。異常があったときは、その対応も書く
- ③ 定期的に振り返って、見直す:チェック表を月に一度は見返して、うまく回っていない項目があれば計画やマニュアルを直す
ほっともっとには本部が用意した衛生管理のマニュアルやクリーンスケジュール表があります。またHACCPの仕組みも整っています。本部の指示どおりに温度チェックや清掃の記録をつけている店舗は大丈夫です。
大事なのは、その記録が「本当にやったことを書いたものになっているか」。ここがゆるみやすいポイントです。
残暑こそ、記録が「作業」になっていないか見直す

9月に入っても、厨房の暑さと食中毒のリスクはまだまだ続きます。むしろ「もう秋だから大丈夫」という気のゆるみが出やすい時期です。夏の繁忙でバタバタしているうちに、こんなことが起きていないでしょうか。
- 温度を測らずに、チェック表だけ「後でまとめて」書いている
- いつも同じ数字(3℃、-18℃など)が並んでいて、実測している気配がない
- 記入する人が決まっておらず、書き忘れの日がある
- 「異常あり」の欄が一度も使われたことがない
記録は、保健所に見せるためだけのものではありません。「いつもと違う」に気づくための道具です。冷蔵庫がいつもより高めの温度を示していたら、扉のパッキンの劣化や庫内の詰め込みすぎを疑えます。記録が実測に基づいていれば、故障の予兆を早めにつかめるんです。
残暑期にとくに見ておきたい5つのポイント

① 冷蔵・冷凍庫の温度
外気温が高いと、開閉のたびに庫内温度が上がりやすくなります。決められた温度に収まっているか、朝・昼・夜の時間帯ごとに実測しましょう。庫内に食材を詰め込みすぎると冷気が回らないので、整理整頓もあわせて。
② 食材の常温放置時間
仕込んだ食材や解凍中のものを、作業台に出しっぱなしにしていないか。暑い厨房では、短時間でも菌が増えます。「使う分だけ出す」「出したらすぐ戻す」を徹底してください。
③ 手洗い
汗をかく季節は、手や腕を触る回数が増えます。トイレの後、ゴミを触った後、作業を切り替えるときは、石けんで二度洗いが基本です。手荒れで洗うのがおろそかになっていないかも見てあげましょう。
④ 加熱の中心温度
揚げ物・焼き物は、中心までしっかり火が通っているか。目安は中心温度75℃で1分以上(ノロウイルスの心配がある食材は85〜90℃で90秒以上)です。フライヤーの油の劣化やタイマー設定のズレも、この時期は確認しておきたいところです。
⑤ クルーの体調管理
出勤時の体調確認と、下痢・嘔吐・発熱・手の傷の有無のチェック。夏バテや食あたりでお腹を壊しているクルーが、そのまま調理に入っていないか。「言い出しにくい空気」をつくらないことも、オーナーの役割です。
保健所の立入や許可更新でも、記録を見られます
保健所の立入検査では、衛生管理計画があるか、その計画に沿った記録が残っているかが確認されます。「マニュアルはあるけど記録がない」「記録はあるけど中身が実態と合っていない」という状態だと、指導を受けることになります。
営業許可は数年ごとに更新が必要で、そのタイミングでも衛生管理の状況はチェックされます。ふだんから記録をきちんと回しておけば、更新のときに慌てることはありません。逆に、直前になって過去の分をまとめて書く——というのは、いちばんやってはいけないパターンです。
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AILLコンサルティングでは、衛生管理計画の整備やチェック表の運用、クルーへの教育の進め方など、店舗の労務・運営まわりのご相談を承っています。「記録が形だけになっている気がする」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
まとめ
- HACCPは2021年6月から原則すべての飲食店で義務化。ほっともっとの店舗も対象で、小規模向けの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を手引書に沿って行う
- やることは①衛生管理計画をつくる ②実施して記録する ③定期的に見直すの3つ。本部のマニュアル・クリーンスケジュール表がその土台になる
- HACCP自体に直接の罰金はないが、計画・記録がないと保健所の指導や行政処分、許可更新でのつまずきにつながる
- 残暑期は記録が「実測に基づく本物」になっているかを見直すタイミング。まとめ書き・書き忘れ・異常欄が空のまま、に注意
- とくに確認したいのは冷蔵冷凍庫の温度・食材の常温放置・手洗い・加熱の中心温度・クルーの体調管理の5つ