「評価制度なんて、うちみたいな店舗規模には関係ない」
そう思っていませんか?私も最初はそう感じていました。評価制度や手当制度というと、大企業の人事部が作るような大掛かりなものをイメージしてしまいますよね。
でも実は、クルーの評価制度や手当制度を新しく整えて、その結果として離職率を下げることができれば、事業主側に助成金が出る仕組みがあります。それが「人材確保等支援助成金」の「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」(以下、雇用管理制度助成コース)です。今回はこのコースの受給要件を整理していきます。
雇用管理制度助成コースとは

このコースは、雇用管理制度を新しく導入・実施し、その結果として離職率を一定水準まで下げた事業主を助成する制度です。「制度を作った」だけでは終わらず、「実際に離職率が下がった」ところまで確認して支給される点が特徴です。
対象になる雇用管理制度は、次の5種類です。
①賃金規定制度
職種・経験・成果などに応じた賃金規定・賃金表を新たに整備する取り組み(中小企業のみが対象)。
②諸手当等制度
住宅手当・家族手当・資格手当などの諸手当、または退職金制度・賞与制度を新たに導入する取り組み。
③人事評価制度
クルーの業績や行動を評価し、生産性向上につなげる仕組みを新たに整備する取り組み。
④職場活性化制度
メンター制度、エンゲージメントサーベイ(従業員調査)、1on1ミーティングのいずれかを新たに導入する取り組み。ここで注意したいのが、1on1ミーティングを導入する場合、面談を行う店長等の実施者は、民間団体等が実施するコーチング・カウンセリングなどのスキル習得を目的とした講習を受講する必要があるという点です。社内だけで完結する独自の勉強会や研修では要件を満たせません。この講習の受講料・交通費なども含めて、費用は全額事業主(会社)が負担する必要があります。
⑤健康づくり制度
定期健診とは別に、人間ドックなどクルーの健康管理を支援する仕組みを新たに整備する取り組み。
ほっともっとの店舗であれば、職務評価シートを使った人事評価制度や、店長との1on1ミーティングといった職場活性化制度は、比較的取り組みやすいのではないでしょうか。ただし1on1ミーティングを選ぶ場合は、店長が外部講習を受ける手間と費用が発生する点は事前に見込んでおく必要があります。
もう一つ見落としがちなのが、すでにキャリアアップ助成金など他の助成金で整備済みの賃金規定・評価制度などを、そのまま使い回すことはできないという点です。このコースはあくまで制度を「新たに」導入・整備することが前提なので、既存の制度をそのまま流用するのではなく、内容を新しく整えたうえで申請する必要があります。
離職率低下の目標水準

このコースを受給するうえで一番のポイントになるのが、「離職率をどれだけ下げる必要があるか」です。目標水準は、雇用保険の一般被保険者数によって次のように変わります。
| 雇用保険一般被保険者数 | 離職率の目標 |
|---|---|
| 1〜9人 | 現状維持(悪化させない) |
| 10人以上 | 1ポイント以上の低下 |
ここでいう「雇用保険一般被保険者数」は、クルー全員ではなく、週20時間以上勤務など雇用保険に加入している人数です。ほっともっとの1店舗であれば、この人数が9人以下に収まっているケースも多いのではないでしょうか。その場合、目標は「離職率を悪化させない」ことになるので、比較的取り組みやすい部類に入ります。
もう一つ押さえておきたいのが、評価時点の離職率が30%以下であることという共通要件です。目標水準を満たしていても、評価時点の離職率そのものが30%を超えていると対象外になります。まずは自店舗の直近の離職率がどのくらいか、確認するところから始めてください。
支給額

支給額は、導入する制度の種類と数によって変わります(令和8年度時点)。
| 導入した制度 | 支給額 |
|---|---|
| 賃金規定制度 | 40万円 |
| 諸手当等制度/人事評価制度/職場活性化制度/健康づくり制度 | 各20万円 |
複数の制度を同時に導入すれば金額は合算されますが、1事業所あたりの上限は80万円までです。たとえば人事評価制度と職場活性化制度を同時に導入すれば20万円+20万円=40万円、賃金規定制度と諸手当等制度なら40万円+20万円=60万円が目安になります。
なお、賃上げなど一定の賃金要件を満たす場合は、賃金規定制度が50万円、その他の制度が各25万円に増額され、上限も100万円まで引き上がります。細かい要件があるので、賃上げも合わせて検討している場合は加算の対象になるか確認しておくとよいでしょう。
ちなみにこのコースには、調理機器やPOSレジなど業務負担を軽減する機器の導入を助成する「業務負担軽減機器等導入」というメニューも別途用意されています。制度導入と組み合わせれば受給額はさらに増える可能性がありますが、要件がより複雑になるため、まずは制度導入のシンプルな要件から検討するのがおすすめです。
対象事業主の要件
受給には、次のような要件を満たす必要があります。
①雇用保険適用事業の事業主であること
ほっともっとのフランチャイズ店舗であれば、通常この要件は問題なく満たせます。
②雇用管理制度整備計画の認定を受けていること
制度を導入する前に、労働局から計画の認定を受けておく必要があります。
③計画期間中、対象労働者を最低1名継続雇用していること
制度を導入しても、対象となるクルーが途中で全員退職してしまうと要件を満たせません。
④対象労働者の2分の1以上に制度を実施・利用させていること
一部のクルーだけに限定して制度を適用するのではなく、対象クルーの半数以上に実際に利用させる必要があります。
⑤解雇による離職者が一定基準以下であること
会社都合の解雇を多く行っている場合は、対象外になることがあります。
⑥雇用管理責任者を選任し、周知していること
店舗ごとに雇用管理の責任者を決め、クルーに周知しておく必要があります。店長を責任者に据えるケースが一般的です。
申請するまでの流れ

実際の手続きは、次の順番で進みます。
①雇用管理制度整備計画の認定申請
制度を導入する計画開始日の6か月前から1か月前までの間に、「雇用管理制度整備計画」を作成し、管轄の都道府県労働局へ提出して認定を受けます。この期限を過ぎると計画自体が受け付けられないため、最初に押さえておきたいポイントです。
②制度の導入・実施
認定された計画にしたがって、賃金規定や評価制度などを実際に整備し、対象クルーに利用させます。
③評価時離職率の算定
計画期間の末日の翌日から起算して12か月間の離職率を算定します。ここが前章の目標水準(現状維持または1ポイント低下)を満たしているかを確認する期間です。
④支給申請
評価時離職率の算定期間が終了した日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請を行います。ここでも申請期限を過ぎると受給できなくなるため、カレンダーで管理しておくと安心です。
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まとめ
- 雇用管理制度助成コースは、賃金規定・諸手当等・人事評価・職場活性化・健康づくりのいずれかの制度を新設し、その結果として離職率を下げた事業主を助成する制度
- すでにキャリアアップ助成金など他の助成金で整備済みの制度をそのまま使い回すことはできず、あくまで「新たに」制度を導入・整備する必要がある
- 職場活性化制度で1on1ミーティングを選ぶ場合、面談を行う店長等は民間団体等が実施する外部講習の受講が必須(社内研修は対象外、費用は事業主が全額負担)
- 離職率の目標は、雇用保険一般被保険者数が1〜9人なら現状維持、10人以上なら1ポイント以上の低下(共通要件として評価時離職率30%以下も必要)
- 支給額は賃金規定制度が40万円、その他4制度が各20万円で、複数導入すれば合算(1事業所あたり上限80万円、賃金要件を満たせば上限100万円)
- 対象労働者の2分の1以上に制度を実施・利用させることや、雇用管理責任者の選任・周知など、いくつかの要件を満たす必要がある
- 雇用管理制度整備計画は制度導入の6か月前から1か月前までに提出が必要で、支給申請は評価時離職率の算定期間終了後2か月以内が期限