「雇用保険料っていくらくらい引かれるんですか?」
雇用保険に加入予定のクルーから、こう聞かれたことはありませんか? 私は正直、「働いた分によるけど500円くらいかな」としか答えていませんでした(笑)。社会保険料と違って雇用保険料は金額が小さいぶん、大雑把にされがちなんですよね。
でも雇用保険料は毎年4月に料率が見直されますし、あいまいなまま答えていると、あとで金額が合わずに信頼を損ないかねません。今回は、クルー負担分・会社負担分の仕組みと、会社の方が多く払う理由を整理していきます。
そもそも雇用保険料って何のための保険料?

雇用保険料は、クルーが失業したときの基本手当(いわゆる失業給付)や、育児休業を取得したときの育児休業給付などの財源になっている保険料です。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあるクルーは、原則として雇用保険の加入対象になります。
社会保険(健康保険・厚生年金)は「4分の3基準」で加入判定をしますが、雇用保険は基準がまったく別物です。ここを混同しているオーナーさんも多いので、まずは「雇用保険は雇用保険、社会保険は社会保険」と分けて考えるのがおすすめです。
実際、私も店長になったばかりの頃は「社会保険に入っていないクルーは雇用保険にも入らない」と思い込んでいて、後から慌てて手続きをしたことがあります。週20時間のシフトを組んでいるクルーは、社会保険の加入要件を満たしていなくても雇用保険には加入させる必要がある、というケースは飲食業では珍しくありません。シフトを組む段階で「この子は週何時間になるか」を意識しておくと、あとで手続き漏れに気づいて焦ることも減ります。
令和8年度の雇用保険料率(一般の事業)

飲食業は「一般の事業」に区分されます。令和8年度(2026年4月〜)の料率は、次のとおりです。
| 区分 | 保険料率 | 月給10万円の場合 |
|---|---|---|
| クルー(労働者)負担 | 5/1000(0.5%) | 500円 |
| 会社(事業主)負担 | 8.5/1000(0.85%) | 850円 |
| 合計 | 13.5/1000(1.35%) | 1,350円 |
見てのとおり、会社負担分はクルー負担分よりも大きいんです。しかもこの料率、毎年4月に見直されることがあります。令和8年度は前年度から一部引き下げられていますが、来年また変わる可能性はゼロではありません。
ここで注意したいのが、給与計算ソフトの料率設定です。多くの給与ソフトは自動でアップデートされますが、クラウド型でない古いソフトや、手計算のExcelで管理している店舗では、4月分の給与計算をする前に料率を手動で書き換える必要があります。私の周りでも「気づいたら去年の料率のまま3か月分計算していた」というオーナーがいて、あとから差額調整に追われていました。4月の給与計算を始める前に、料率表を最新のものに差し替えているか一度確認してみてください。
なぜ会社の方が多く負担するのか

なぜ会社の方が負担が多いんでしょうか。
雇用保険料のうち、失業等給付・育児休業給付にあてる部分(5/1000)は、クルーと会社で折半しています。ここまでは労使で公平に負担している部分です。
会社負担分にはこれに加えて、「雇用保険二事業」にあてる3.5/1000が上乗せされています。これは「雇用安定事業」と「能力開発事業」の財源で、会社だけが全額を負担する仕組みです。この財源、実は雇用調整助成金やキャリアアップ助成金など、このブログで何度も取り上げてきた助成金の原資になっているんです。
つまり、会社が多く払っている雇用保険料の一部が、巡り巡って自分の店舗が申請する助成金として返ってくる構造になっています。そう考えると、少し見方が変わってきませんか。
クルーに聞かれたときの説明の仕方

実際にクルーから聞かれたときは、細かい料率の内訳まで説明する必要はありません。私は次のように伝えるようにしています。
「雇用保険料は、もし辞めたときの失業手当や、育休を取ったときの給付金の財源になっているんだよ。」
これだけでも「なんとなく引かれてる」というモヤモヤはかなり解消されます。給与明細の見方を丁寧に説明できるオーナーは、それだけでクルーからの信頼が違ってきます。
逆に、聞かれてもあいまいに流してしまうと、「この店は給与のこと、ちゃんと管理してないのかも」という不安につながりかねません。細かい料率まで暗記する必要はありませんが、「何のための天引きか」を自分の言葉で説明できるようにしておくことは、給与計算を任されているオーナーとしての最低限の備えだと思っています。
📋 給与計算のご相談、受け付けています
雇用保険料率の設定確認・給与ソフトの料率更新・クルーへの説明資料づくりなど、給与計算に関するご相談をお受けしています。「今の設定で合っているか不安」という段階でもお気軽にどうぞ。
まとめ
- 雇用保険料は、失業給付や育児休業給付の財源になる保険料で、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあるクルーが加入対象
- 令和8年度(一般の事業)の料率は、クルー負担5/1000(0.5%)・会社負担8.5/1000(0.85%)・合計13.5/1000(1.35%)
- 料率は毎年4月に見直される可能性があるため、給与計算ソフトの設定を毎年確認する習慣が大切
- 会社負担分が大きいのは、労使折半分に加えて「雇用保険二事業」分、3.5/1000を会社だけが負担しているため
- この会社負担分は、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金など、店舗が申請する助成金の財源にもなっている
- クルーから聞かれたときは、細かい料率より「何のための保険料か」を伝えるだけで十分