「キャリアアップ助成金 賞与・退職金制度導入コースの受給要件」AILLコンサルティング ブログ#071

「クルーさんに賞与や退職金なんて、考えたこともなかったです」

そう感じるオーナーさん、多いんじゃないでしょうか。パート・アルバイトのクルーに賞与を出している店舗は少数派ですよね。社会保険や有給休暇と違って、賞与や退職金は法律上のマストではないので、どうしても後回しになりがちです。

でも実は、この「非正規雇用のクルーに賞与・退職金制度を新しく作って、実際に支給する」ことに対して、事業主側に助成金が出る制度があります。それが「賞与・退職金制度導入コース」です。今回はこのコースの受給要件を整理していきます。


賞与・退職金制度導入コースとは

クルーに賞与・退職金制度を説明するほっともっとオーナーのイメージ

このコースは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者(有期雇用労働者等)を対象に、賞与または退職金制度(あるいはその両方)を新たに設け、就業規則等に規定したうえで、実際に支給または積立てを実施した事業主を助成する制度です。

ポイントは、正社員向けの制度をそのままにしておくのではなく、非正規雇用のクルーにも新たに制度を適用することが条件になっている点です。「うちは正社員には賞与を出しているから」というだけでは対象になりません。クルーを対象にした制度を新設して、初めて助成の対象になります。


受給に必要な金額基準

賞与・退職金の金額基準を確認する書類のイメージ

「賞与・退職金制度」といっても、大きな金額を用意しなければいけないわけではありません。実際に定められている基準は、次のとおりです。

制度 最低基準
賞与 6か月分相当として5万円以上を支給
退職金 1か月分相当として3,000円以上を6か月分支給、または6か月分相当として18,000円以上を積立て

賞与であれば半年で5万円、月あたりにすると1万円にも満たない金額です。「制度」と聞くと大掛かりに感じますが、まずはこの水準を満たす形で就業規則等に規定し、実際に支給・積立てを行えば要件を満たせます。


支給額は中小企業なら最大56.8万円

支給額をノートパソコンで試算するほっともっとオーナーのイメージ

支給額は企業規模と、賞与・退職金のどちらを導入するかによって変わります(令和8年度時点)。

企業規模 賞与・退職金いずれか一方 両方同時に導入
中小企業 40万円 56.8万円(40万円+加算16.8万円)
大企業 30万円 42.6万円(30万円+加算12.6万円)

ほっともっとのフランチャイズ店舗の多くは中小企業に該当するので、賞与・退職金のどちらか一方を導入すれば40万円、両方を同時に導入すれば56.8万円が目安になります。ここで注意したいのは、この金額は「1事業所につき1回のみ」で、対象になるクルーが何人いても増えないという点です。

一方で、前述の「6か月分相当5万円以上」という賞与の最低基準はクルー1人あたりの金額です。しかも次の章で説明するとおり、この制度は原則として対象になるクルー全員に適用する必要があります。つまり対象クルーが50人いる店舗なら、助成金として受け取れるのは40万円(または56.8万円)だけなのに対し、実際に支払う賞与の総額は50人×5万円=250万円が必要になる計算です。助成額よりも実際の人件費負担のほうが大きくなるケースが多いので、「対象になるクルーがどれくらいいるか」を先に把握してから導入を検討することをおすすめします。


対象労働者の要件

助成の対象になる有期雇用労働者等には、次のような要件があります。

①制度の新設日より前から雇用されていること
新設日から起算して3か月以上前から雇用されているクルーであることが必要です。導入直前に採用したクルーだけを対象にしても、要件は満たせません。

②新設日以降も継続して雇用されていること
制度の新設日以降、6か月以上継続して雇用されている必要があります。短期間で退職してしまうと、支給・積立ての実績として認められません。

③雇用保険の被保険者であること
初回の支給・積立てから6か月間、雇用保険の被保険者であることも条件です。週の労働時間などにより雇用保険に加入していないクルーは対象から外れます。

④原則として対象クルー全員に適用すること
「一部のクルーだけ賞与を出す」という限定は、原則として認められません。就業規則に新設した制度は、①〜③を満たす有期雇用労働者等すべてに適用する必要があります。ただし、退職金制度で「勤続1年以上」のような、著しく長くない勤続年数を加入要件にすることは、退職金の性質上合理的な理由として認められます。

「誰が対象になるか」を考えるときは、まず対象クルーの人数を数えるところから始めてください。前章で触れたとおり、対象人数がそのまま実際の賞与総額に直結するため、人数の把握が導入の可否を左右します。


申請するまでの流れ

キャリアアップ計画書と申請書類を確認するほっともっとオーナーのイメージ

実際の手続きは、次の順番で進みます。

①キャリアアップ計画書の提出
制度を実施する日の前日までに、「キャリアアップ計画書」を管轄の労働局へ提出しておく必要があります。ここが後回しになると、それだけで対象外になってしまうので、最初に押さえておきたいポイントです。

②就業規則等の改定
賞与・退職金制度を新設する内容を、就業規則または労働協約に明文化します。労働者10人未満の店舗で就業規則の作成義務がない場合でも、規定自体は整えておく必要があります。

③制度に基づく支給・積立ての実施
規定した内容にしたがって、実際に賞与を支給する、または退職金を積み立てます。ここで前述の金額基準(賞与5万円以上・退職金3,000円以上など)を満たしているかを確認してください。

④支給申請
取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請を行います。この申請期限を過ぎてしまうと受給できなくなるので、カレンダーで管理しておくと安心です。

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AILLコンサルティングでは、ほっともっとオーナー向けに賞与・退職金制度導入コースの制度設計・就業規則の整備・申請サポートを承っています。「クルーに何か還元したいけれど、何から始めればいいかわからない」というオーナーさんは、まずはお気軽にご相談ください。

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まとめ

  • 賞与・退職金制度導入コースは、非正規雇用のクルーに賞与または退職金制度を新設し、支給・積立てを実施した事業主を助成する制度
  • 金額基準は賞与が6か月分相当5万円以上、退職金が1か月分相当3,000円以上(または6か月分相当18,000円以上の積立て)と、大掛かりでなくても要件を満たせる
  • 支給額は中小企業ならいずれか一方の導入で40万円、両方同時に導入すれば56.8万円が目安(1事業所につき1回のみで、対象人数が増えても変わらない)
  • 賞与5万円などの最低基準はクルー1人あたりの金額で、制度は原則として対象クルー全員に適用する必要があるため、対象人数が多いほど実際の賞与総額は大きくなる
  • 対象労働者は、新設日の3か月以上前から雇用され、新設日以降も6か月以上継続雇用されていることなどが条件
  • キャリアアップ計画書の提出は制度実施日の前日までに行う必要があり、支給申請は取組後6か月分の賃金支払い日の翌日から2か月以内が期限