「2026年の最低賃金の決定はいつ?」AILLコンサルティング ブログ#083

「今年の最低賃金、いくらになるんだろう?」

9月頃になると気になってくるのが「今年の最低賃金」。最低賃金って、いつ、どうやって決まっているのでしょうか?私は正直に言うと、「偉い人たちが相談して、9月中に発表している」くらいの認識しかありませんでした(笑)

でも実際には、「誰が」「いつ」「どういう手順で」決めているのかというプロセスがちゃんとあります。これを知っておくと、ニュースで「答申」という言葉が出てきたときに「最低賃金はまだ決定していないんだな」と正しく受け取れますし、いつから給与計算に反映すればいいのかも早めに見通せるようになります。

今回は、2026年度の埼玉県の実例を交えながら、最低賃金が決まるまでの流れを整理していきます。


まず「中央」が全国の目安を示す

最低賃金引き上げのニュースを見るほっともっとオーナーのイメージ

最低賃金の改定は、まず国レベルの中央最低賃金審議会が「目安」を示すところから始まります。厚生労働大臣の諮問を受けて、労働者側・使用者側・公益側の委員が議論し、都道府県をA〜Cランクに分けたうえで、それぞれ「時給を何円引き上げるべきか」という目安額を提示するんです。

2026年度は7月28日に、全国加重平均で55円引き上げ(時給1,176円)という目安が発表されました。ただし、これはあくまで「目安」であって、都道府県ごとの正式な金額ではありません。「今年はこのくらいの引き上げ幅が想定される」という、いわば全国共通の参考ラインです。

この目安は全国一律の金額ではなく、都道府県ごとの物価や賃金水準に応じてランクに分けたうえで、ランクごとに異なる引き上げ額が示されます。このランク制度、これまでは4段階(A〜Dランク)だったのですが、地域間の格差を縮める狙いから、2026年度は3段階(A〜Cランク)に再編されました。埼玉県が含まれるAランクは、東京や大阪など都市部が中心の6都府県です。

ランク 引き上げ目安額 対象都道府県
Aランク 54円 埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
Bランク 56円 北海道・宮城・福島・茨城・栃木・群馬・新潟・富山・石川・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・三重・滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山・島根・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・福岡
Cランク 56円 青森・岩手・秋田・山形・鳥取・高知・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄

次に「地方」が実際の金額を答申する

地方最低賃金審議会の答申内容を確認するほっともっとオーナーのイメージ

中央の目安が出たあと、各都道府県では地方最低賃金審議会が、その地域の実情(物価・賃金水準・企業の経営状況など)を踏まえて審議し、実際の金額を「答申(とうしん)」します。ここで初めて、都道府県ごとの具体的な時給額が見えてくるわけです。

「答申」とは、行政機関や上司からの質問に対して、調べた結果と意見をまとめて伝えることです。

面白いのは、この地方審議会の答申が、必ずしも中央の目安どおりになるとは限らないという点です。埼玉県の場合、2026年8月5日に地方審議会が答申した引き上げ額は55円で、これは中央目安(Aランク+54円)を1円上回る、いわゆる「上乗せ答申」でした。答申額は時給1,196円。地域の実情を踏まえて、目安より踏み込んだ判断がされることもあるんですね。

ここで大事なのは、答申が出た時点ではまだ「決定」ではないということです。ニュースで「○○円に答申」と報じられても、これは審議会からの提案段階であって、正式に効力を持つには、もう一段階手続きが残っています。


答申のあとに「異議申出」の期間がある

地方審議会が答申を出すと、その内容は公示され、労働者・使用者どちらの立場からも異議申出ができる期間が設けられます。この期間は例年10日間程度で、異議が出された場合は再審議が行われることもあります。

異議申出の期間を経て特に問題がなければ、都道府県労働局長が正式に最低賃金額を決定し、官報で公示します。ここまで来て、ようやく「決定」ということになります。答申から決定・公示までは、だいたい1ヶ月弱かかるイメージです。


実際に「発効」するのはいつ?

最低賃金の発効日をカレンダーに書き込むほっともっとオーナーのイメージ

官報で公示されたあとも、すぐに新しい最低賃金が適用されるわけではありません。企業側が準備できるよう、公示から一定の周知期間を置いてから発効する仕組みになっています。この発効日は都道府県ごとに異なりますが、10月1日前後に集中するのが例年のパターンです。

埼玉県の場合、2026年度の最低賃金は2026年10月1日から時給1,196円で発効する見通しです。答申(8月5日)から発効(10月1日)まで、約2ヶ月弱の期間があるということですね。

💡 決定までの流れ(まとめ)
①7月:中央最低賃金審議会が全国の目安を発表
②8月:地方最低賃金審議会が都道府県ごとの金額を答申
③答申後10日間程度:異議申出の期間
④異議申出期間後:都道府県労働局長が決定・官報で公示
⑤10月1日前後:発効(実際の適用開始)


オーナーとして今からできること

「発効日はまだ先だから」と後回しにしたくなる気持ち、正直よくわかります。でも、答申が出た時点で金額はほぼ固まっていますし、発効日も見えています。だとしたら、今のうちにできる準備は前倒しで進めておいたほうが、あとがずっと楽になります。

具体的には、現在の時給が新しい最低賃金を下回っていないかのチェック、シフト全体の人件費への影響試算、労働契約書の巻き直しなど、やるべきことは意外と多いんです。私自身、答申のニュースを見たら「よし、準備するか」と動き始めるようにしています。ギリギリになって慌てるより、そのほうが結果的に気持ちも楽です。

もうひとつ、早めに動いておきたい理由があります。賃金の引き上げには、キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」という助成制度が使えるケースがあるのですが、これは引き上げを実施する前に、賃金引き上げ計画を労働局へ届け出ておく必要があるんです。発効日を迎えてから「そういえば助成金があったな」と動き出しても、原則として間に合いません。最低賃金の発効スケジュールが見えている今のうちに、この計画届の準備も一緒に進めておくのがおすすめです。(過去記事「ほっともっとオーナーが助成金を申請してみた【実体験】」


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まとめ

  • 最低賃金の改定は、①中央最低賃金審議会が全国の目安を発表(7月)→②地方最低賃金審議会が都道府県ごとの金額を答申(8月)という流れで進む
  • 地方審議会の答申は、中央の目安を上回る「上乗せ答申」になることもある(2026年度埼玉県は目安+1円の55円引き上げで答申)
  • 答申後は異議申出の期間(10日間程度)を経て、都道府県労働局長が決定・官報で公示する
  • 公示のあとも周知期間を置いてから発効する仕組みで、実際の適用開始は10月1日前後に集中する
  • 2026年度埼玉県は、2026年10月1日から時給1,196円で発効する見通し
  • 答申が出た段階でほぼ金額は固まるため、発効日を待たずに早めに準備を始めるのがおすすめ