「賞与にかかる社会保険料の計算|月給と何が違うのか」AILLコンサルティング ブログ#035

賞与(ボーナス)を支給するとき、月給とは異なる計算ルールで社会保険料を算出しなければなりません。「お任せしていて仕組みがよく分からない」というFCオーナーも少なくないはずです。

しかし仕組みを理解しておくと、計算ミスの早期発見やクルーへの説明がスムーズになります。今回は賞与の社会保険料について、月給との違いを中心に解説します。


賞与から差し引かれる保険料の種類

賞与の計算書類を確認するほっともっとオーナーのイメージ

賞与から控除される社会保険料には以下があります。

保険の種類 賞与から控除
健康保険料
介護保険料(40歳以上)
厚生年金保険料
雇用保険料
子ども・子育て支援金(2026年4月分〜・新設)

所得税(源泉徴収)も賞与から差し引かれますが、保険料とは計算方法が異なります(後述)。


月給との一番大きな違い:計算の基準が違う

月給の社会保険料は「標準報酬月額」という等級をもとに計算します。実際の給与額がいくらであっても、その等級に対応した固定額から保険料を算出するのが特徴です。

賞与の社会保険料は「標準賞与額」をもとに計算します。標準賞与額とは、実際の賞与支給額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。

例:賞与が184,500円の場合

1,000円未満を切り捨て → 標準賞与額は 184,000円
この184,000円に保険料率を掛けて計算します。


計算の具体的な手順

電卓と給与計算表で賞与の社会保険料を計算するイメージ

① 標準賞与額を算出する

実際の賞与支給額の1,000円未満を切り捨てるだけです。

例:支給額 175,800円 → 標準賞与額 175,000円


② 健康保険料・厚生年金保険料を計算する

保険料(個人負担分)= 標準賞与額 × 保険料率 ÷ 2(労使折半)

保険料率は都道府県や加入している健康保険によって異なります。協会けんぽ(埼玉県)2026年度の場合は以下のとおりです。

種類 保険料率(全体) 個人負担
健康保険(40歳未満・65歳以上) 9.67% 4.835%
健康保険+介護保険(40〜64歳) 11.29% 5.645%
子ども・子育て支援金(2026年4月分〜・新設) 0.23% 0.115%
厚生年金 18.30% 9.15%

※ 子ども・子育て支援金は2026年4月分(5月納付分)から新たに加わった項目です。健康保険・厚生年金と同様に賞与からも控除されます。

例:標準賞与額175,000円・40歳未満のクルーの場合

  • 健康保険料(個人):175,000円 × 4.835% = 約8,461円
  • 子ども・子育て支援金(個人):175,000円 × 0.115% = 約201円
  • 厚生年金保険料(個人):175,000円 × 9.15% = 約16,012円

③ 雇用保険料を計算する

雇用保険料だけは、標準賞与額(切り捨て後)ではなく、実際の賞与支給額に料率を掛けます。また、健康保険・厚生年金のような労使折半ではなく、労働者と事業主でそれぞれ異なる料率が適用されます。

クルー負担:実際の賞与支給額 × 雇用保険料率(一般の事業:2026年度は1,000分の5)

料率は年度ごとに改定されることがあります。最新の情報は厚生労働省またはハローワークで確認してください。


上限額に注意

月給との大きな違いがもうひとつあります。賞与の社会保険料には上限額が設定されています。

保険の種類 上限
健康保険 573万円 / 年度(4月〜翌3月の累計)
厚生年金 150万円 / 1回の賞与

たとえば厚生年金の場合、賞与が200万円であっても「標準賞与額=150万円」として計算し、超過分には保険料がかかりません。

健康保険は年度累計での上限のため、夏・冬と複数回賞与を支給する場合は累計額の管理が必要です。上限を超えた分について保険料を徴収してしまうと、クルーへの過剰徴収になるので注意してください。


所得税の計算:前月の給与がカギになる

賞与の源泉所得税は月給とは別の計算方法です。ポイントは「前月の給与額」が税率に影響することです。

  1. 前月の社会保険料等控除後の給与額を確認する
  2. 国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で税率を調べる
  3. 賞与支給額(社会保険料等控除後)に税率を掛ける

前月の給与が高いほど適用される税率も高くなります。賞与の支給タイミングによってクルーの手取り額が変わることがあるため、質問を受けた際にも参考にしてください。


FCオーナーが間違えやすい3つのポイント

給与計算のミスに気づいたほっともっとオーナーのイメージ

① 1,000円未満の切り捨てを忘れる

標準賞与額の計算でこの切り捨てを忘れると、保険料計算が合わなくなります。給与ソフトが自動処理してくれていても、仕組みを知っておくと検算できます。

② 雇用保険の計算を標準賞与額でやってしまう

雇用保険は切り捨て前の実際の支給額に料率を掛けます。健康保険・厚生年金とルールが違うため、混同しやすいポイントです。

③ 上限を超えているのに全額に保険料をかける

特に厚生年金の150万円上限を見落とし、超過分にも料率を掛けてしまうケースがあります。支給前に上限額を確認する習慣をつけましょう。


📋 給与計算のご相談、受け付けています

賞与計算の確認・給与ソフトの設定内容の見直し・社会保険料の正しい徴収方法など、給与計算に関するご相談をお受けしています。「この計算で合っているか不安」という段階でもお気軽にどうぞ。

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まとめ

比較項目 月給 賞与
計算の基準 標準報酬月額(等級テーブル) 標準賞与額(実額の1,000円未満切り捨て)
上限 等級の上限 健康保険573万円/年・厚生年金150万円/回
雇用保険の基準 実際の給与支給額 実際の賞与支給額(切り捨て前)
所得税の計算方法 毎月の給与額で算出 前月の給与額で税率が決まる
  • 賞与の社会保険料は月給と似て非なるルールで動いている
  • 標準賞与額=実際の支給額の1,000円未満を切り捨てた金額
  • 雇用保険だけは切り捨て前の実際の支給額に料率を掛ける
  • 上限額(厚生年金150万円/回・健康保険573万円/年度)を超えた分には保険料がかからない
  • 所得税は前月の給与額で税率が変わる点に注意

給与ソフトに頼る場面でも仕組みを理解しておくことで、入力ミスや過剰徴収を防ぐことができます。計算方法に不明点がある場合は、年金事務所やAILLに相談することをおすすめします。