「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース|4つの評価方法を比較する」AILLコンサルティング ブログ#061

「要素別点数法、単純比較法、要素比較法、分類法……好きなように選んでください」

そう言われて「はい、要素比較法で」と即答できる方、いらっしゃったら「先生」と呼ばせてください。

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースには、職務評価の手法を使って賃金規定を改定すると20万円の加算がもらえる仕組みがあります。ただ、案内を読むと聞き慣れない4つの手法がずらっと並んでいて、正直「結局どれを選べばいいの」と手が止まった方も多いのではないでしょうか。名前だけ見ると学生時代の試験を思い出し、私も最初は思わずページを閉じそうになりました。

この記事では、4つの手法の違いを、ほっともっとの現場に置き換えながら整理してみます。実は#55の記事でご紹介した職務評価シートも、この4手法のうちの一つに当てはまるんです。


職務評価とは何か──人事評価との違い

4つの評価方法の案内を前に戸惑うほっともっとオーナーのイメージ

4つの手法の話に入る前に、大事な前提を一つ。職務評価は「人」を評価するものではなく、「職務(仕事)の大きさ」を評価するものです。「挨拶が丁寧」「頑張っている」といった個人の勤務態度や能力を見るのは人事評価であって、職務評価とは別物。クルーからすれば「頑張ってる感」も評価してほしいところでしょうが、残念ながら国はそこを見てくれません(笑)。この違いを混同すると加算の対象外になってしまうので、まず押さえておきたいポイントです。

そのうえで、職務評価は賃金規定を改定する「前」に実施し、その結果を賃金テーブルに反映させる必要があります。改定してから評価しても加算にはならないので、順番にも注意が必要です。


①要素別点数法──要素ごとに点数をつけて積み上げる

ポジションごとに点数をつける評価シートのイメージ

職務をいくつかの評価要素に分解し、要素ごとに重要度(ウェイト)と点数(スケール)をかけ合わせて合計点を出し、その点数で等級を決める方法です。実は#55でご紹介した職務評価シートは、この要素別点数法そのものでした。カウンター・ライス・フライヤー・ガス・ディシャップの5ポジションへの対応力を最大15点、発注・レジ点検・棚卸を任せられるかを最大6点で採点し、合計21点満点で等級を判定する。これはまさに「複数の評価要素を積み上げる」やり方です。

細かく積み上げる分、クルー本人にも「どこが評価されてどこが足りないか」を説明しやすいのが強みです。一方で、要素ごとのウェイト設定に手間がかかり、店舗によって多少の恣意性が入りやすい点は留意が必要です。「なぜカウンターが3点満点で、発注権限が2点なんですか」と聞かれたら、正直「私がそう決めたので」としか言えません(笑)


②単純比較法──職務全体をまるごと比べる

複数のポジションの職務内容を見比べるほっともっとオーナーのイメージ

各ポジションの職務内容を「職務記述書」としてまとめ、要素に分解せずに全体の大きさをまるごと比較して順位づけする方法です。たとえば「カウンター」「フライヤー」「ディシャップ」の職務記述書を作り、業務範囲の広さや責任の重さを見比べたうえで「ディシャップ>フライヤー>カウンター」というように相対的な序列をつけ、それぞれに賃金水準を当てはめます。

点数化しない分、直感的で分かりやすいのが利点です。「ディシャップを任せられる人は、リーダー格の人」って、オーナーなら分かりますよね。単純比較法は、その感覚を書類として正式に認めてもらう手法、と考えると気が楽になります。ただし判断基準が明文化されにくく、ポジションの数が増えるほど比較が難しくなる面もあります。


③要素比較法──要素ごとにレベル定義と照らし合わせる

要素別点数法と単純比較法の中間のような手法です。評価要素ごとに「レベル1〜5」のような定義書を用意し、実際の職務がどのレベルに一番近いかを照らし合わせて格付けします。

たとえば「判断の複雑さ」という要素で考えると、レベル1は「マニュアル通りに対応すれば完結する仕事」、レベル5は「状況に応じてその場で独自の判断が求められる仕事」と定義します。この定義に当てはめると、フライヤーの「揚げ時間を把握する」はレベル3程度、ディシャップの「状況判断による各ポジションへの指示」はレベル5、といった具合に格付けできます。要素ごとの基準が言葉で明文化されているので説明はしやすい手法です。とはいえ、そのレベル定義書を作り込むのに手間がかかるのが難点です。


④分類法──先に等級の型を決めて当てはめる

要素別点数法とは逆の発想で、先に「等級の定義」を決めておき、そこに個々の職務を当てはめていく方法です。#55でご紹介した「研修級・レギュラー級・エキスパート級」の3段階も、考え方としてはこの分類法に近いものです。「エキスパート級=複数ポジションに対応でき、発注などの権限も持っている」という定義を先に作り、その定義に当てはまるかどうかで格付けする、というイメージですね。ゲームで言うところの「見習い・僧侶・賢者」みたいな職業(ジョブ)の枠を先に用意しておく感じ、と言えば伝わりやすいでしょうか。

新しいポジションが増えたときも、既存の定義に当てはめるだけで運用できる手軽さがあります。ただし、格付けと賃金額の対応関係(相関関係)をきちんと示せる形にしておかないと、加算の審査で「結局何を根拠に等級を決めたのか」が伝わりにくくなる点は注意が必要です。


ほっともっとオーナーが選ぶならどれか

自店に合った評価方法を選ぶほっともっとオーナーのイメージ

4つとも間違いではないのですが、私の実感としては、飲食店の現場で扱いやすいのは要素別点数法だと思っています。理由はシンプルで、ポジション対応力や業務権限のように、もともと「できる・できない」がはっきり判断しやすい要素が多いからです。単純比較法や要素比較法のように職務記述書やレベル定義書をゼロから作り込むよりも、点数を積み上げる形の方が、日々の評価とも繋がりがあり運用しやすいと感じています。分類法も悪くないのですが、等級の定義を先に決めるには、まず自分の頭の中を整理する作業が必要で、これが地味にしんどいです。

ただし、どの手法を選ぶにしても、正社員(正規雇用労働者)の職務評価もあわせて実施することを忘れないようにしてください。有期雇用のクルーだけを評価しても、正社員側の評価がなければ加算の対象になりません。これから取り組む方はぜひ気をつけていただきたいポイントです。

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まとめ

  • 職務評価は「人」ではなく「職務の大きさ」を評価するもの。人事評価とは別物であり、賃金規定の改定前に実施する必要がある
  • 要素別点数法は、評価要素ごとに点数をつけて積み上げる方法。#55の職務評価シート(ポジション対応力+業務権限)はこの手法の実例
  • 単純比較法は、職務記述書をもとに職務全体をまるごと比較して順位づけする方法
  • 要素比較法は、要素ごとのレベル定義書と照らし合わせて格付けする方法
  • 分類法は、先に等級の定義を決めておき、そこに職務を当てはめる方法。#55の「研修級・レギュラー級・エキスパート級」に近い考え方
  • 飲食店の現場では要素別点数法が扱いやすいが、いずれの手法でも正社員の職務評価をあわせて実施することが加算の必須条件