「オーナー、産休中って給料出ないですよね?」
社会保険に加入しているクルーから、おそるおそるそう聞かれたことがあります。「うちからは出ないけど」と答えかけて、ハッとしました。「うちから」出ないだけで、健康保険から出るんです。
これが「出産手当金」です。給与計算をしていると、産休に入るクルーが出てきたときに必ずぶつかる制度なので、今日は仕組みと支給額の計算方法、そして給与計算担当として気をつけたいポイントを整理しておきます。
出産手当金とは?会社ではなく健康保険から出るお金

出産手当金とは、出産のために仕事を休み、給与の支払いを受けられなかった健康保険の被保険者に、健康保険(協会けんぽや組合健保)から支給される手当です。会社が持ち出すお金ではなく、日ごろ納めている社会保険料の中から給付される制度なので、給与計算上は「会社から支払う給与」とは別枠で考える必要があります。
ここで押さえておきたいのが、対象になるのは健康保険(社会保険)に加入しているクルーだけという点です。以前#60の記事でお話しした「年収の壁」を超えて、週30時間以上勤務するなどして社会保険に加入しているクルーだからこそ受けられる保障、ということですね。壁を超えることに不安を感じているクルーには、こうした「もしもの時の備え」も一緒に伝えると、納得感が違ってくると思います。
いつからいつまでもらえる?支給される期間
支給の対象になるのは、出産予定日の42日前(双子以上の場合は98日前)から、出産日の翌日以降56日目までの間で、仕事を休んだ期間です。予定日より出産が遅れた場合は、その遅れた分の日数も対象に含まれます。産前・産後をあわせると、最大で約100日ほど休業期間をカバーしてくれる計算になります。
支給される金額はどう計算する?

支給額は、次の計算式で求めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算式 | 支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3 |
| 支給対象日数 | 産前42日+産後56日を上限に、実際に休んだ日数分 |
| 給与が一部出ている場合 | 出産手当金より少なければ、差額のみ支給 |
たとえば標準報酬月額が20万円のクルーであれば、1日あたり約4,444円(20万円÷30日×2/3)が支給される計算になります。仮に100日分休業したとすると、44万円ほどが健康保険から支給されるイメージです。(※概算です。正確な金額は協会けんぽや社労士さんに確認。)
「出産育児一時金」との違いに注意
出産手当金とよく混同されるのが、「出産育児一時金」です。名前が似ているうえに両方とも健康保険から出るお金なので、私も最初は完全にごっちゃにしていました(笑)。違いを整理すると、こうなります。
- 出産手当金……仕事を休んで給与が出なかった分の「所得補償」。被保険者本人だけが対象
- 出産育児一時金……出産にかかる費用をカバーする「一時金」(1児あたり50万円程度)。被保険者本人はもちろん、被扶養者(扶養に入っている配偶者など)も対象
つまり出産育児一時金は「産む人」への一時金、出産手当金は「働けなかった分」への所得補償。クルーから「出産育児一時金ってもらえますか?」と聞かれたら別制度の話なので、混同しないよう伝えたいところです。
給与計算担当として気をつけたいこと

① 産休中の給与は「無給」で扱うのが一般的
産休中に会社から給与を満額支払ってしまうと、出産手当金が減額・不支給になることがあります。多くのFC店舗では、産休中は無給として扱い、出産手当金をそのまま受け取ってもらう運用にしているケースが一般的です。
② 申請書には事業主証明欄がある
出産手当金の申請書には、医師・助産師の証明欄に加えて、事業主が休業期間や給与の支払い状況を証明する欄があります。給与計算の記録と食い違いがないよう、休んだ期間の勤怠データを正確に残しておくことが大切です。
③ 社会保険料の「産前産後休業免除」もセットで確認
産休期間中は、届出により本人負担・会社負担ともに社会保険料が免除される制度があります。出産手当金の申請と別に手続きが必要なので、給与計算のタイミングであわせて確認しておくと漏れがありません。
「うちからは給料が出ない」とだけ伝えると、クルーは不安になってしまいます。でも実際は、社会保険料の免除もあわせれば、産休中の生活はかなり支えられている状態なんです。この仕組みを正しく伝えられるかどうかで、クルーさんの安心感がずいぶん変わると感じています。
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まとめ
- 出産手当金は、出産で休業し給与が出なかった健康保険の被保険者に支給される手当。会社ではなく健康保険からの給付
- 対象は社会保険に加入しているクルーのみ。「年収の壁」を超えて加入するからこそ受けられる保障
- 支給期間は産前42日(多胎98日)〜産後56日、支給額は標準報酬月額の平均÷30日×2/3
- 「産む人」への一時金である出産育児一時金とは別制度。混同に注意
- 産休中の給与は無給扱いが一般的。申請書の事業主証明欄と社会保険料の産前産後休業免除もあわせて確認する