「賞与支払届って、何ですか?」
今年の夏、初めて夏季賞与を支給したというオーナーさんから、こんな質問をいただきました。実は私自身も、最初に賞与を出したときは「賞与を渡して終わり」だと思っていて、その後にやるべき手続きがあることを知りませんでした(笑)。給与計算を外注していても、賞与を支給した後にどんな手続きが発生するのかは、オーナーとして知っておきたいところです。
今回は、夏季賞与を支給したときにかかる社会保険料の計算の仕組みと、「賞与支払届」の提出期限について整理していきます。
賞与を支給したら、給与とは別の手続きが必要になる

夏季賞与を支給すると、給与と同じように社会保険料(健康保険・厚生年金保険)がかかります。ここで見落としがちなのが、会社側の届出義務が発生するという点です。
具体的には、賞与を支給するたびに「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」という書類を、日本年金機構(事業所を管轄する年金事務所または広域事務センター)に提出しなければなりません。「賞与は年に1〜2回しか出さないから忘れがち」という声をよく聞きますが、給与計算と同じ感覚で、支給のたびにセットで対応する意識を持っておくと安心です。
まず押さえたい「標準賞与額」の考え方
賞与にかかる社会保険料を計算するベースになるのが「標準賞与額」です。計算方法はシンプルで、次のとおりです。
賞与の額面(税引き前の総支給額)から、1,000円未満の端数を切り捨てた金額 = 標準賞与額
この標準賞与額に、月々の給与と同じ健康保険料率・厚生年金保険料率を掛けて、社会保険料を算出します。厚生年金保険料率は全国一律18.3%(労使折半なので、クルー負担分は9.15%)で、健康保険料率は協会けんぽの都道府県ごとの料率表(または加入している健康保険組合の料率)を確認します。月給計算のときと同じ料率表を使うので、「給与計算の延長線上にある」とイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
標準賞与額には上限がある

意外と知られていないのが、標準賞与額には上限額が設けられている点です。健康保険と厚生年金保険とで、上限の考え方が異なります。
| 保険の種類 | 上限額の考え方 |
|---|---|
| 健康保険 | 年度(毎年4月1日〜翌年3月31日)の累計額573万円が上限。年度内で573万円を超えた月以降に支給された賞与の標準賞与額は「0円」として扱う。 |
| 厚生年金保険 | 1ヶ月あたり150万円が上限。同じ月に2回以上賞与を支給した場合は合算して判定する。 |
ほっともっとの経営で賞与にこの上限額まで達するケースは多くありませんが、複数店舗を経営していて役員報酬とは別に高額の賞与を設定している場合や、年度内に転職・異動があった従業員の累計を管理する場合には関係してくる可能性があります。「うちには関係ない」と思わず、頭の片隅に置いておきたいところです。
雇用保険料は上限なし、賞与にもかかる
社会保険料と合わせて忘れてはいけないのが雇用保険料です。雇用保険料は社会保険料と違って標準賞与額のような上限がなく、支給した賞与の全額に対して、月々の給与と同じ料率で計算します(雇用保険料率の詳しい内訳については、以前の記事「雇用保険料はいくら?クルー負担分・会社負担分の仕組み」もあわせてご覧ください)。
社会保険料は「標準賞与額×料率」、雇用保険料は「支給額そのまま×料率」と、計算のベースが違うという点を押さえておくと、給与計算ソフトの出力を見たときに「あれ、なんで数字が違うんだろう」と迷わずに済みます。
「賞与支払届」は支給日から5日以内に提出

社会保険料の計算ができたら、次はいよいよ「被保険者賞与支払届」の提出です。ここで一番間違えやすいのが提出期限の短さです。
賞与を支給した日から起算して5日以内に、事業所を管轄する年金事務所(または日本年金機構の広域事務センター)へ提出する
給与計算のように「月末締め・翌月払い」といった余裕はなく、支給した瞬間からカウントダウンが始まるイメージです。5日目が土日祝など行政機関の休日にあたる場合は、その直後の開庁日が期限になります。夏季賞与の支給日をあらかじめ決めているなら、その5日後がいつになるかをカレンダーに書き込んでおくくらいの意識でちょうどよいと思います。
提出方法は、電子申請・郵送・窓口持参のいずれかが選べます。あらかじめ「賞与支払予定月」を年金事務所に登録している事業所には、その月が近づくと届出用紙が事前に送られてくるので、届いたらすぐに手をつけられるよう準備しておくと安心です(詳しい記入例や様式は、日本年金機構の「従業員に賞与を支給したときの手続き」のページで確認できます)。
賞与を支給しなかった場合も届出が必要
ここで意外な落とし穴になるのが、「今年は賞与を支給しなかった」というケースです。あらかじめ賞与支払予定月を登録している事業所は、その月に実際は賞与を支給しなかった場合、「賞与不支給報告書」を提出する必要があります。この届出をせずに放置していると、年金事務所から催告状が送られてくることになります。
「支給していないんだから何もしなくていいだろう」と考えがちなポイントですが、賞与支払予定月を一度登録すると、支給の有無にかかわらず何らかの報告が必要になる、という仕組みだと覚えておいてください。
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まとめ
- 賞与を支給すると、給与と同じく社会保険料(健康保険・厚生年金保険)がかかり、会社には「被保険者賞与支払届」の提出義務が発生する
- 社会保険料の計算のベースになるのが「標準賞与額」(賞与の額面から1,000円未満を切り捨てた金額)
- 標準賞与額には上限があり、健康保険は年度累計573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限
- 雇用保険料には上限がなく、支給額の全額に対して月々の給与と同じ料率で計算する
- 賞与支払届は支給日から5日以内に、事業所を管轄する年金事務所へ提出する
- 賞与支払予定月を登録している場合、支給しなかった月は「賞与不支給報告書」の提出が必要