「所得税はどうやって算出する?役員報酬にかかる仕組みを解説」AILLコンサルティング ブログ#078

「役員報酬からも所得税が天引きされているのは知っているんですけど、どうやって計算されているんですか?」

先日、こんな質問をいただきました。私も法人化した当初は、給与明細に書かれた所得税額をただ眺めているだけで、正直どうやって計算されているのかよく分かっていませんでした(笑)。給与計算を外注している場合でも、自分の役員報酬にかかる税金の仕組みは知っておきたいところですよね。

今回は、役員報酬から天引きされる所得税がどうやって算出されているのか、その仕組みを整理していきます。


役員報酬も「給与所得」としてクルーと同じ仕組みで計算される

役員報酬の給与明細で所得税額を確認するほっともっとオーナーのイメージ

まず押さえておきたいのが、税務上、役員報酬はクルーへの給与とまったく同じ「給与所得」として扱われるという点です。事業所得や配当所得のような区分ではなく、毎月の源泉徴収も、クルーの給与と同じ仕組み・同じ税額表を使って計算します。

「役員報酬だから何か特別な計算方法があるのでは」と思われがちですが、実はそうではありません。違うのはあくまで金額の決め方(定期同額給与のルール)の部分であって、決まった金額に対して所得税をいくら天引きするかという計算の仕組みそのものは、クルーの給与と共通です。


計算のベースは「社会保険料等控除後の給与等の金額」

源泉徴収の金額を決めるうえで最初のステップになるのが、「社会保険料等控除後の給与等の金額」を出すことです。

計算式はシンプルで、次のとおりです。

役員報酬(月額)- 社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険の個人負担分)= 社会保険料等控除後の給与等の金額

ポイントは、額面の役員報酬そのものではなく、社会保険料を差し引いたあとの金額を基準にする点です。この金額をもとに、次に説明する源泉徴収税額表を参照します。役員報酬は毎月定額(定期同額給与)なので、社会保険料の等級が変わらない限り、この基準額もほぼ毎月同じ数字になります。


源泉徴収税額表の「甲欄」「乙欄」というルール

源泉徴収税額表を見ながら税額を確認するイメージ

次に出てくるのが、国税庁が毎年公表している「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」です。この表には「甲欄」と「乙欄」という2つの列があり、どちらを使うかで税額が大きく変わります。

区分 適用される場合
甲欄 「扶養控除等(異動)申告書」をその会社に提出している場合(=主たる給与の支払者)。扶養親族等の数に応じた控除が反映され、税額は低めになる。
乙欄 扶養控除等申告書を提出していない場合(複数の会社から給与を受けている場合の、2社目以降など)。扶養親族等の数による控除がなく、同じ金額でも税額はかなり高くなる。

ここで実務上気をつけたいのが、複数の法人を持っているオーナーのケースです。1つの会社にしか扶養控除等申告書は提出できないため、メインの会社では甲欄が適用されても、2つ目以降の会社からも役員報酬を受けている場合、そちらは乙欄が適用され、天引きされる所得税がぐっと高くなります。複数法人でほっともっとを運営しているオーナーさんは、どの会社で申告書を提出しているか確認しておくとよいでしょう。


扶養親族等の数で税額が変わる

甲欄が適用される場合、税額表では扶養親族等の数(0人・1人・2人…)ごとに列が分かれています。同じ「社会保険料等控除後の給与等の金額」でも、扶養親族等の数が多いほど、その月の源泉徴収税額は少なくなる仕組みです。

この「扶養親族等の数」は、扶養控除等申告書に書かれた控除対象配偶者や扶養親族の人数がベースになります。年の途中で結婚したり、子どもが生まれたりして扶養親族が増えた場合は、申告書を修正して会社(自分の法人)に提出することで、翌月以降の源泉徴収額に反映されます。放置していると、本来より多く天引きされ続けてしまうので注意が必要です。


実際の計算の流れ

ここまでの内容を、計算のステップとして整理するとこうなります。

  • ①役員報酬(月額)から社会保険料の個人負担分を差し引く——「社会保険料等控除後の給与等の金額」を算出する
  • ②甲欄・乙欄のどちらを使うか確認する——扶養控除等申告書をその会社に提出しているかどうかで判定する
  • ③扶養親族等の数を確認する——甲欄の場合、扶養親族等の数に応じた列を使う
  • ④源泉徴収税額表で該当する行・列を探す——①の金額が当てはまる範囲を表の中から見つけ、その月の源泉徴収税額を確定する

役員報酬は定期同額給与なので、社会保険料の等級や扶養親族等の数に変化がない限り、①〜④の結果は毎月ほぼ同じになります。逆にいえば、年度の初めに一度きちんと計算しておけば、その年の毎月の天引き額はほぼ固定できるということです。


年末調整で「概算」が「確定額」に精算される

年末調整の書類を確認するほっともっとオーナーのイメージ

ここまで説明してきた毎月の源泉徴収は、あくまで「概算」です。生命保険料控除やiDeCoの掛金、住宅ローン控除など、毎月の計算には反映されない控除もあるため、実際に1年間で支払うべき所得税とは差額が生じます。

この差額を精算するのが年末調整です。1年間の役員報酬総額と、実際に控除できる各種控除を反映して正しい年税額を計算し、毎月天引きしてきた金額との差額を12月分の給与で調整します。天引きしすぎていれば還付、不足していれば追加徴収になる、という仕組みです。

役員報酬は年の途中で金額が変わりにくい分、クルーの給与に比べると年末調整での変動は小さくなりがちですが、生命保険料控除などを申告し忘れると、本来受けられるはずの還付を逃してしまいます。年末調整の書類は面倒でも、忘れずに提出しておきたいところです。


役員報酬ならではの3つのポイント

①定期同額給与だから、年間の税額がシミュレーションしやすい
毎月の役員報酬が一定なので、年度の初めに源泉徴収額を計算しておけば、年間を通じてほぼ同じ金額が天引きされます。クルーのように残業代で毎月変動することがない分、年間の手取り額を見通しやすいのは役員報酬のメリットともいえます。

②複数法人を持つ場合は甲欄・乙欄の切り替えに注意
前述のとおり、扶養控除等申告書を提出していない会社からの役員報酬は乙欄が適用され、税額が高くなります。どの会社を「主たる給与」として申告書を提出しているか、必ず把握しておきましょう。

③源泉徴収税額表は毎年改定されることがある
国税庁が公表する源泉徴収税額表は、税制改正のたびに内容が変わることがあります。基礎控除や給与所得控除が見直された年は、同じ役員報酬額でも天引きされる所得税額が変わるので、年が変わったら最新の税額表を確認する習慣をつけておくと安心です(クルーの年収の壁についても同様の改正がありました。詳しくは以下の記事もご覧ください)。

▶ あわせて読みたい:「103万・106万・130万の壁」をクルーにどう説明するか——2025年の税制改正で変わった控除額の考え方をあわせて解説しています。


📋 役員報酬の税額計算、正しくできていますか?

AILLコンサルティングでは、役員報酬・給与計算の代行や、源泉徴収の仕組みが正しく反映されているかの確認をお受けしています。「自分の役員報酬の天引き額、これで合っているのかな」と気になった方は、お気軽にご相談ください。

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まとめ

  • 役員報酬もクルーの給与と同じ「給与所得」として扱われ、同じ源泉徴収の仕組みで所得税を計算する
  • 計算のベースは「役員報酬 − 社会保険料の個人負担分」で求める社会保険料等控除後の給与等の金額
  • 源泉徴収税額表には甲欄・乙欄があり、扶養控除等申告書を提出している会社は甲欄、それ以外は乙欄が適用される(複数法人を持つオーナーは要注意)
  • 甲欄の場合、扶養親族等の数が多いほど毎月の源泉徴収税額は少なくなる
  • 毎月の源泉徴収はあくまで概算で、年末調整で1年間の正しい税額に精算される
  • 役員報酬は定期同額給与のため年間の税額を見通しやすい一方、源泉徴収税額表は税制改正で変わることがあるため、毎年最新版を確認する習慣をつけておきたい