「そろそろあのクルー、時給上げてもいいかな」
正直に言うと、昇給はこの感覚だけで決めていました。頑張っているのは分かる。でも「頑張っている」を数字にできていなかったんです。
感覚で決めていると、基準がブレますし、クルー本人にも「なぜ上がったのか」「なぜ上がらないのか」がうまく説明できません。それで作ったのが、今回ご紹介する「職務評価シート」です。私が店舗で実際に運用しているものをもとに、昇給タイミングの設計についてお話しします。
研修級・レギュラー級・エキスパート級の3段階

私の店舗では、クルーの等級を研修級・レギュラー級・エキスパート級の3段階に分けています。等級によって時給が変わる、シンプルな仕組みです。入社したクルーはまず「研修級」からスタートし、経験を積むにつれて上の等級を目指していきます。等級の具体的な判定条件は、次の点数のつけ方とあわせてご説明します。
点数のつけ方(ポジション評価×業務権限評価)

点数は大きく2つの要素で構成しています。1つ目はポジション別評価。カウンター・ライス・フライヤー・ガス・ディシャップの5ポジションを、それぞれA(3点)・B(2点)・C(1点)・未経験(0点)で評価し、最大15点です。2つ目は業務権限評価。発注・レジ点検・棚卸を任せられるかを○(2点)・×(0点)で判定し、最大6点。合計で満点21点になります。
ポジションの幅を評価に入れているのは、「一つのことを完璧にやる」より「複数のことをこなせる」ほうがシフトの組みやすさに直結するからです。業務権限を別立てにしているのは、発注や棚卸のような店舗運営に関わる仕事は、作業スピードとは別の「任せられる安心感」を評価したいためです。
この合計点をもとに、等級の判定はこうなります。
| 等級 | 判定条件 |
|---|---|
| 研修級 | 研修期間中(累計勤務時間200時間未満)、または高校生 |
| レギュラー級 | 研修卒業後で、評価点15点以下 |
| エキスパート級 | 研修卒業後で、評価点16点以上 |
研修中や高校生は時間ベースで一律「研修級」とし、それ以外は点数で判定する。入り口はシンプルに、慣れてきたら実力で見るという組み合わせにしています。
実際の評価結果はこうなる

評価結果の例です。
| クルー | 合計点 | 判定等級 | 時給改定 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 17点 | エキスパート級 | 1,141円→1,210円 |
| Bさん | 13点 | レギュラー級 | 1,141円のまま |
Aさんのように16点以上の場合、約70円の昇給にしました。15点以上点数を取れば時給に反映されるので、「頑張っても給料が変わらない」という不満は起きにくくなります。評価シートには、成長点や次に習得してほしいポジションもコメントで残すようにしていて、これが本人へのフィードバックにもなっています。
昇給タイミングの決め方、4つの型を比較する
昇給のタイミングをどう判定するか、大きく分けると4つのやり方があります。それぞれのメリット・デメリットを整理しました。
| 型 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 期間ベース 入社◯ヶ月後に昇給 |
運用がシンプル | 実力差が反映されない。仕事の飲み込みが早い人ほど物足りなさを感じる |
| 時間ベース 累計勤務時間で判定 |
出勤日数が少ないクルーにも公平。基準が明確 | 時間をこなしただけで技能が身につくとは限らない |
| スキルベース 職務評価シート型 |
実力が反映され納得感が高い。作業習得のモチベーションになる | 評価者の主観が入りやすい。基準作り・運用に手間がかかる |
| 併用型 研修中は時間、研修卒業後は点数 |
入口は分かりやすく、慣れてからは実力で評価できる | 仕組みの説明にひと手間かかる |
私の店舗は、この「併用型」にあたります。研修中は時間で区切ってシンプルに、研修卒業後は点数で公平に。どちらか一方だけだと出てくる不満を、両方組み合わせることで補っているイメージです。
職務評価シートは助成金にも使える

職務評価シートのもう一つのメリットは、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースとの相性の良さです。このコースは、有期雇用のクルーなどの基本給について、賃金規定を改定して増額させることが要件になっています。
このとき悩みやすいのが「何を根拠に、誰をどれだけ上げたのか」を説明する部分です。職務評価シートのように点数と等級、改定前後の時給が記録として残っていると、賃金規定の整備や申請時の説明がぐっとスムーズになります。感覚だけで昇給していると、あとから「この昇給の根拠は何ですか」と聞かれても答えづらいんですよね。クルーには仕事へのモチベーションになるし、そのまま助成金申請の土台にもなる。これは一石二鳥です。
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AILLコンサルティングでは、ほっともっとオーナー向けに職務評価シートの設計や、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースとの連携に関するご相談を承っています。等級制度と助成金をセットで整えたい方はお気軽にどうぞ。
まとめ
- 昇給を感覚だけで決めると、基準がブレて「なぜ上がったか」が説明しづらくなる
- 等級は研修級・レギュラー級・エキスパート級の3段階。研修中は時間、研修卒業後は点数で判定
- 点数はポジション別評価(最大15点)+業務権限評価(最大6点)の合計21点満点
- 昇給タイミングの決め方には期間・時間・スキル・併用の4つの型があり、それぞれメリット・デメリットが異なる
- 職務評価シートの記録は、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コース申請時の説明資料としても活用できる