「売上はそれなりにあるのに、人件費で利益が消える」——そう感じたとき、何の数字を見ていますか?
多くのオーナーが確認するのは人件費率(人件費 ÷ 売上)ですが、現場の生産性を把握するうえで「人時売上」という指標も合わせて見ることが重要です。
今回は、人時売上の計算方法・目安・改善のポイントを整理します。
人時売上とは

人時売上(にんじうりあげ)とは、クルーが1時間あたり、いくらの売上を生み出したかを示す指標です。
人時売上の計算式
人時売上 = 売上高 ÷ 総労働時間
※総労働時間 = その日(または期間)に働いたクルー全員の合計労働時間
月次の計算例:月間売上600万円・30日営業の場合
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 月間売上高 | 600万円 |
| 月間標準労働時間(30日営業) | 約1,300〜1,380時間(店舗レイアウトによる) |
| 人時売上(計算値) | 6,000,000 ÷ 1,380 ≒ 4,350円(4,350〜4,600円) |
日次の計算例:平日売上180,000円・総労働時間40時間の場合
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平日の売上高 | 180,000円 |
| その日の総労働時間 | 40時間 |
| 人時売上 | 180,000 ÷ 40 = 4,500円 |
月次・日次どちらの単位でも計算できます。月全体の傾向を見るなら月次、特定の日(平日・土日)の違いを把握するなら日次で確認するのが実践的です。
人件費率との違い——何が見えるか
人件費率と人時売上はどちらも「人件費の重さ」に関係する指標ですが、見えるものが異なります。
| 計算式 | 何を示す指標か | |
|---|---|---|
| 人件費率 | 人件費 ÷ 売上高 × 100 | 売上に対して人件費が何%かかっているか(コスト比率) |
| 人時売上 | 売上高 ÷ 総労働時間 | 1時間の労働でいくら売れたか(時間当たりの生産性) |
たとえば人件費率が同じ25%でも、売上規模が小さければ手元に残る額は少なくなります。一方、人時売上が高ければ、少ない時間でより多くを売れている——つまり「現場の効率」が数字として見えてきます。
人件費率が「費用の割合」を示すのに対し、人時売上は「労働の密度」を示します。両方を並べて見ることで、問題の所在が見えやすくなります。
目安の数値——どのくらいが適切か

ほっともっとでは、売上高と営業日数に応じた標準労働時間が本部から示されます。この標準労働時間をもとに人時売上を算出すると、以下の水準が目安になります。
| 状況(月600万円・30日営業時) | 人時売上の目安 |
|---|---|
| 要改善(基準を大きく下回っている) | 3,000円台 |
| 標準水準 | 約4,350〜4,600円 |
| 効率的な運営(標準労働時間を下回る) | 4,600円以上 |
💡 曜日・時間帯・季節で変わる
人時売上は、繁忙日(土日祝・昼ピーク)と閑散時間帯では大きく差が出ます。「1日全体の平均」だけでなく、「時間帯別・曜日別」に把握することで、シフトの無駄が見つかりやすくなります。
人時売上を上げる2つのアプローチ

計算式から整理すると、人時売上を上げる方法は2つです。
① 売上を上げる——分子を大きくする
② 総労働時間を減らす——分母を小さくする
どちらか一方だけを追いかけると歪みが生じることがあります。「売上を上げよう」と無計画に人を増やせば分母が増えて人時売上は下がります。逆に「人を減らそう」と絞りすぎると、商品のクオリティが落ちて売上が下がります。
大切なのは、「売上に見合った人員配置ができているか」を定期的に確認することです。
① 売上面でできること
- ピーク時間帯に注文を逃さない体制を整える(提供スピード・接客対応)
- 大口注文・予約に対応できる仕組みをつくる
- 繁忙日・閑散日の傾向を把握し、在庫と仕込みを最適化する
② 労働時間面でできること
- 閑散時間帯に多くのクルーを入れすぎない(時間帯別の配置最適化)
- ピーク前に仕込み・清掃を終えておくことで、ピーク帯の人員を絞る
- 作業手順を標準化して、少ない人数でも回せるようにする
▶ あわせて読みたい:クルーのオールラウンダー化がもたらすメリット——どのポジションも担当できるクルーを増やすことが、少ない人員で柔軟に対応するうえで有効です。
現場での使い方——まず週単位で記録する
人時売上を活用するうえで最初のステップは、「記録する習慣をつくること」です。日々の売上と総労働時間を記録しておけば、週・月単位で傾向が見えてきます。
| 記録する項目 | 入手先・確認方法 |
|---|---|
| 日次売上 | POSレジの日次集計 |
| クルーの総労働時間 | タイムカード・勤怠管理ツールの合計 |
| 人時売上(計算値) | 売上 ÷ 総労働時間(Excelや手書きで可) |
まずは「今週の人時売上はいくらだったか」を毎週確認するところから始めると、数字の感覚が身についてきます。先週と比べて下がっているなら、「売上が落ちたのか」「人員が多かったのか」を確認する習慣が自然とつきます。
💡 「気になったら確認する」より「定点観測」が有効
問題が起きてから数字を見るのではなく、週ごとに定点観測することで「いつから下がり始めたか」「繁忙日と閑散日の差はどのくらいか」が見えてきます。比較することで、指標は初めて意味を持ちます。
▶ あわせて読みたい:週次レポートをシフト管理に活かす方法——週次での確認をルーティン化する具体的な方法はこちら。
こんなオーナーにおすすめ
- クルーを増やしつつ、利益を上げたい
- 人件費は確認しているが、どう改善すればいいかわからない
- 時間帯ごとのシフト配置が感覚頼みになっている
- 現場の生産性を数字で把握し、シフト作成に活かしたい
人時売上はむずかしい指標ではありません。売上と労働時間を割り算するだけです。ただ、「どの数字が自店の目安か」「何を改善すれば数字が動くか」を整理するには、全体の数字を俯瞰して見る視点が必要です。シフト作成・人件費管理のご相談もお気軽にどうぞ。
📋 店舗運営のご相談、受け付けています
人時売上の確認方法・シフト作成の見直し・人件費管理のサポートなど、店舗運営に関するご相談もお受けしています。「自店の数字が適切かどうか確認したい」という段階でもお気軽にどうぞ。
まとめ
- 人時売上 = 売上高 ÷ 総労働時間。1時間の労働でいくら売れたかを示す指標
- 人件費率(コスト比率)と並べて見ることで、現場の「時間当たりの生産性」が把握できる
- ほっともっとでは月600万円・30日営業時の人時売上は約4,350〜4,600円。4,000円を下回る場合は人員配置の見直しが必要
- 人時売上を上げるには「売上を上げる」か「総労働時間を絞る」か——バランスが重要
- まずは日次・週次で売上と総労働時間を記録し、定点観測する習慣をつくることが第一歩