「クルーのオールラウンダー化——ほっともっとで実践するメリット」AILLコンサルティング 店舗運営#018

「クルーは4人いるけど、フライヤーが出来るクルーがいない」

シフトを組んでいて、こういう状況になったことはありませんか。特定のポジションにしか入れないクルーが多いと、シフトが組みにくくなり、オーナーが穴を埋めるために入らざるを得なくなる。

この問題を根本から解決するのが、クルーのオールラウンダー化です。オールラウンダー化の目的はシンプルです——ピークを少人数で回せる体制を作ること。ピークを制する店は、人件費も制す。少人数で回せる日が増えるほど、シフトの組み方も、利益も変わってきます。


オールラウンダー化とは

複数ポジションで活躍するほっともっとクルーのイメージ

オールラウンダー化とは、クルーがライス・カウンター・ガス・フライヤーなど、ピークを回すために必要な複数のポジションをこなせるようになることです。

ほっともっとの主なポジションはこうなっています。

ポジション 主な業務 習得難易度
ライス ご飯の盛り付け・全体のペース管理 比較的早く習得できる
カウンター 接客・注文受付・お弁当の受け渡し 比較的早く習得できる
ガス ガス台での炒め物・ボイル 慣れるまで時間がかかる
フライヤー 揚げ物の種類・ストック数の判断 慣れるまで時間がかかる

ピーク中に求められるのは、この4つのポジションをこなせる力です。1つずつ固めることが、オールラウンダー化の出発点になります。

いきなり、すべてのポジションを覚えさせる必要はありません。「最低2つのポジションに入れる」状態を作ることが最初の目標です。


オールラウンダー化がもたらす3つのメリット

オールラウンダー化でシフトが柔軟になるイメージ

① ピークを少人数で回せるようになる

ライス・カウンター・ガス・フライヤーを複数こなせるクルーが揃えば、ピーク時に必要な人数を絞ることができます。「フライヤーを出来るクルーがいないからピークが回らない」という状態がなくなり、特定のクルーへの依存リスクが下がります。前回の記事で触れた「8時間超の割増賃金」問題も、オールラウンダーが増えることで自然と解消されていきます。

② 人時売上が改善する

ピークを少人数で回せるようになると、その分の人件費を大口注文の対応などに振り向けられます。「今この時間帯に何人必要か」という判断が精緻になり、シフトの最適化が進みます

③ クルーの定着率が上がる

できることが増えると、クルー自身が「成長している」という実感を持てます。複数ポジションをこなせるクルーは職場での存在感が増し、「ここにいる意味がある」という居場所感がうまれます。これがそのまま定着率の向上につながります。


習得の入口は「その人の特性」で決める

クルーの成長とスキルアップを示すイメージ

「どのポジションから教えるか」に、正解はありません。そのクルーの特性を見て、最初の入口を決めることが育成をスムーズにします。

クルーの特性 向いている入口ポジション
人と話すのが得意、表情が豊か、反応がよい カウンター
リズム作業が得意、ライン全体の流れを感じ取れる ライス
黙々と集中して作業できる、熱や忙しさに動じない ガス・フライヤー

大切なのは、最初に「得意なこと・好きなこと」から始めて成功体験を積ませることです。入口で失敗が続くと、その後の育成全体が停滞します。1つのポジションの判断基準を決め、基準がクリアー出来たら次のポジションへ進む。これにより、クルーは自信を持って次のポジションに向かえます。

💡 「次のポジションへ進む基準」を事前に決めておく

どのポジションも奥が深く、極めるには時間がかかります。しかし、「ある程度できるようになったから次へ」という曖昧な判断では、育成が進んでいるのかどうかわからなくなります。各ポジションで習得すべき項目をリスト化し、「ここまでできたら次へ進む」という基準をオーナーが持っておくことが重要です。


「店を回せる」とはどういうことか

ほっともっとでオールラウンダー化を実践するオーナーのイメージ

オールラウンダー育成の最終ゴールは、「店を回せるクルー」を4人に1人はつくることです。全員がそのレベルを目指す必要はありません。ただ、店舗責任者が不在のとき、誰かがそのポジションを担える必要があります。

「店を回せる」とは、4つのポジションをこなせるというだけではありません。

① 4ポジション全てこなせる
ライス・カウンター・ガス・フライヤーを状況に応じて担える。

② 他の3ポジションに指示を出せる
自分が動きながら、他のクルーに的確な指示を出せる。これは経験で身につく部分もありますが、もともと人に指示を出すことが得意かどうかという特性にも左右されます。

③ 注文の優先順位を判断できる
ほっともっとの注文は、来店・電話・ネット・デリバリー(Uber Eats・出前館・Woltなど)の4種類が同時に入ってきます。「店を回せる」クルーは、これをどの順にさばくかを判断できます。

注文の種類 さばき方のポイント
デリバリー
(Uber Eats・出前館・Woltなど)
ドライバーがいつ来るかわからないため最優先で対応
ネット注文 設定した受取時間までに仕上げる。状況次第で受取時間の調整も判断
電話注文 現在の混み具合を見て来店時間を提案し、正確に伝える
来店客 上記3種の合間に差し込みながら提供。後回しにしすぎない判断が必要

この判断力は、マニュアルだけでは身につきません。4ポジションを習得した上で、ピークを何度も経験することで初めて育ちます。だからこそ、「店を回せるクルー」は育成に時間がかかる——しかし、そのクルーが1人いるだけでお店の安定感は大きく変わります。


実践のポイント

① スキルマップを作る

誰がライス・カウンター・ガス・フライヤーのどれを習得しているかを一覧にします。これを見れば「あのクルーはまだガスに入れない」「この人はフライヤー以外は全部OK」が一目でわかります。「見える化」することで、育成の優先順位が決まります

② 4ポジション習得+店を回せたら時給を上げる仕組みを作る

「4ポジションができ、店を回せるようになったら時給が上がる」というルールを就業規則に明記します。クルーにとっての「頑張る理由」になり、オーナーにとってはキャリアアップ助成金(賃金改定コース)の申請要件にもなります。一石二鳥です。

③ 目標は「4人に1人」から始める

全員を「店を回せる」レベルにしようとすると、育成が空回りします。まずは今いるクルーの中から1人ずつ、店を回せる人材を育てることを目標にしてください。その1人がいることで、オーナー不在時のリスクが大きく下がります。

💡 繁忙期前に「最低2ポジション(うち1つは調理側)」が当面のゴール

繁忙期に向けて採用したクルーをすぐ戦力にするには、ライス・カウンター・ガス・フライヤーのうち最低2つを習得させることが目安です。カウンターしかできないクルーはピークのシフトに入れにくい。ライスも扱えれば、シフト組みの幅が広がります。


オールラウンダー化はお店の「底力」になる

オールラウンダーが増えるほど、お店の運営は安定します。誰かが休んでもシフトが崩れない。繁忙期も少人数で乗り切れる。オーナーが現場に入らなくても回せる日が増えていく。

そしてこれが積み重なると、「自分がいなくても回るお店」ができあがります。それがオーナーの時間を生み出し、2店舗目・3店舗目への道を開きます。

オールラウンダー化は、すぐに結果が出るものではありません。でも、半年・1年続けると、お店の底力が明らかに変わります。まず今いるクルーの中で「このクルーの特性は何か、次に何を教えられるか」を考えるところから始めてみてください。

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まとめ

  • オールラウンダー化の目的はピークを少人数で回せる体制を作ること
  • 育てるべきポジションはライス・カウンター・ガス・フライヤーの4つ。まず「最低2ポジション(うち1つは調理側)」を目標にする
  • 習得の入口は固定しない。そのクルーの特性を見て、成功体験を積みやすいポジションから始める
  • 「店を回せる」とは、4ポジション習得+他ポジションへの指示出し+来店・電話・ネット・デリバリーの注文を優先判断しながらさばけること
  • 目標は全員ではなく「4人に1人」。まず1人育てることでオーナー不在時のリスクが大きく下がる
  • 4ポジション習得+店を回せる状態への時給アップを就業規則に明記すれば、キャリアアップ助成金の申請要件にもなる

次回は「外国人スタッフの教育で使える助成金はある?」をテーマにお届けします。

在留資格、日本語のハンドル、文化的なギャップ——外国人スタッフの採用・育成には独特の課題があります。一方で、うまく活用すれば採用コストを大幅に削減できる助成金が存在します。「外国人スタッフは難しそう」と感じているオーナーこそ、読んでほしい内容です。次回もお楽しみに。