「交通費の正しい処理|社会保険・所得税への影響」AILLコンサルティング ブログ#039

「交通費って、全額非課税じゃないの?」

給与計算をしていると、こういう疑問が出てくることってありませんか。私も最初はそう思っていました。「交通費は非課税」と聞いていたので、社会保険の計算には関係ないのかな、と。

でも実は、交通費の扱いは所得税と社会保険で全く異なります。この違いを知らないまま計算してしまうと、毎月の社会保険料がずれてしまうことがあるんです。

今回は、交通費がどう処理されるべきなのかを「所得税」「社会保険」「雇用保険」に分けて整理しました。給与計算を担当している方も、まるごとお任せしているという方も、知っておいて損はない内容です。


所得税での交通費:非課税には「限度額」がある

給与明細に交通費の処理を確認するほっともっとオーナーのイメージ

まず所得税の話から始めます。

交通費(通勤手当)には「非課税限度額」が定められています。この限度額の範囲内であれば、所得税の課税対象になりません——つまり源泉徴収を計算するとき、その分の金額を除いて計算していい、ということです。

限度額は通勤手段によって異なります。なお、距離はすべて通勤経路(道路距離)による片道距離です。直線距離ではないので、注意してください。

通勤手段 非課税限度額(月額)
電車・バスなど公共交通機関 月15万円まで(2024年1月改正)
自家用車・バイク(片道2km未満) 全額課税(非課税なし)
自家用車・バイク(片道2km以上10km未満) 月4,200円まで
自家用車・バイク(片道10km以上15km未満) 月7,300円まで
自家用車・バイク(片道15km以上25km未満) 月13,500円まで

公共交通機関を利用しているクルーは月15万円まで非課税なので、ほとんどのケースで問題ありません。

注意が必要なのは自家用車やバイク通勤のクルーです。たとえば通勤経路で片道5kmの自家用車通勤をしているクルーに月1万円の交通費を支給している場合、非課税になるのは4,200円まで。残りの5,800円は課税所得として源泉徴収の計算に含まれます。

さらに、通勤経路が片道2km未満の場合は全額が課税対象です。「職場の近くに住んでいるクルーへの交通費支給」は特に見落とされがちなので、気をつけてみてください。

クルーが入社したとき、または引越したときに通勤手段と片道距離を申告してもらう仕組みを作っておくと、このあたりの計算がぐっと楽になります。


社会保険での交通費:報酬に含まれる

交通費が社会保険料の計算に含まれることを確認するほっともっとオーナーのイメージ

ここが特に勘違いが多いところです。

社会保険(健康保険・厚生年金)では、交通費は「報酬」に含まれます。

社会保険料を計算するための基準になる「標準報酬月額」は、基本給だけでなく通勤手当や各種手当を含めた報酬全体をもとに決まります。つまり、交通費が多いほど標準報酬月額が上がり、保険料も高くなるということです。

「所得税では非課税なのに、社会保険料には含まれる」——これが多くのオーナーさんが混乱するポイントです。所得税の「非課税」はあくまで税金の話。社会保険の計算ルールとは別物なんです。

もう一点、見落とされがちなのが月額変更届(随時改定)の判定です。固定的賃金に継続的な変動があって標準報酬月額が2等級以上変わったときに届出が必要になりますが、この判定にも交通費は含まれます。「基本給は変えていないけど、交通費を大幅に増やした」という場合も対象になることがあるので、交通費を改定するときは意識しておきましょう。


雇用保険での交通費:賃金として扱われる

雇用保険料も、交通費を含めた賃金全額をもとに計算します。

雇用保険の保険料は「賃金総額 × 保険料率」で算出しますが、この「賃金総額」には交通費も含まれます。社会保険と同様、「非課税だから除いていい」という話にはなりませんので、注意してください。


3つの制度でこんなに扱いが違う

ここまでの話を整理するとこうなります。

制度 交通費の扱い ポイント
所得税 限度額まで非課税 限度額超は課税対象になる
社会保険
(健康保険・厚生年金)
報酬に含まれる 標準報酬月額・月変判定に影響する
雇用保険 賃金に含まれる 保険料の計算基礎になる

同じ「交通費」でも、制度ごとに扱いが違うのが紛らわしいですよね。でも一度整理してしまえば、あとは毎回同じルールで処理するだけなので、難しくはありません。


実務で確認しておきたいこと

最後に、給与計算の現場で気をつけたいポイントをまとめます。

  • 自家用車通勤クルーの距離を把握する——距離が確認できていないと、正しい非課税額が適用できません。入社時・転居時に通勤方法と片道距離を申告してもらいましょう。
  • 4〜6月の支給額に注意する——社会保険の標準報酬月額は、毎年4・5・6月の報酬をもとに算定されます(定時決定)。この期間に交通費を増減させると、保険料が変わる可能性があります。交通費の見直しをするなら、タイミングも確認しておくと安心です。
  • 給与計算ソフトの設定を確認する——交通費が「非課税通勤費」として正しく分類されているかを確認してください。設定が間違っていると、社会保険への算入や所得税の計算がずれてしまうことがあります。

交通費は「非課税」というイメージが先行しやすいですが、制度ごとに扱いが全く違います。「うちの計算、合っているかな?」と気になった方は、ぜひAILLにご相談ください。

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まとめ

  • 交通費(通勤手当)には、所得税の非課税限度額がある(公共交通機関は月15万円まで)
  • 自家用車・バイク通勤は距離に応じた限度額があり、片道2km未満は全額課税になる
  • 限度額を超えた交通費は課税所得になるため、源泉徴収の計算に影響する
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)では交通費は報酬に含まれる→ 標準報酬月額・月変判定に影響する
  • 雇用保険でも交通費は賃金に含まれる→ 保険料の計算基礎になる
  • 実務での確認ポイント:自家用車通勤クルーの距離把握・4〜6月の支給額・給与計算ソフトの設定