「「げっぺん」って何?昇給・最低賃金改定後の社会保険料はいつ変わる?」AILLコンサルティング 労務管理#023

算定基礎届が終わって、「ひとまず社会保険の手続きは済んだ」と思いたいところです。

でも実は、年の途中で給与が大きく変わったとき、標準報酬月額を見直す手続きが別途必要になることがあります。算定基礎届は年に1回、9月から翌年8月まで同じ等級を使いますが、その間に昇給や最低賃金改定があると、実態とずれる場合があります。

そのときに対応するのが「月額変更届(随時改定)」、通称「月変(げっぺん)」です。毎年秋の最低賃金改定は、まさにこの手続きが発生しやすいタイミングです。今回はその仕組みと手続きを整理します。


月額変更届(随時改定)とは?

昇給・時給変更を通知するほっともっとオーナーのイメージ

算定基礎届は、毎年4〜6月の報酬をもとに標準報酬月額を年1回見直す手続きです。一方、年の途中で給与が大きく変わり、標準報酬月額との差が大きくなった場合に随時見直すのが月変(随時改定)です。正式名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」と言います。

「少し給与が変わるたびに届け出が必要なのか」と心配になるかもしれませんが、そうではありません。随時改定には3つの条件があり、すべてを満たした場合にだけ手続きが必要です。


どんなときに必要?3つの条件

随時改定が必要になるのは、次の3つをすべて満たす場合です。

条件 内容
① 固定的賃金が変動した 昇給・降給、時給の変更、手当の新設・廃止・変更など、毎月決まって支払われる賃金が変わった
② 2等級以上の差が生じた 変動後の3ヶ月の報酬平均が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上異なる
③ 3ヶ月とも17日以上出勤 変動後の3ヶ月間、それぞれ支払基礎日数が17日以上ある(パートは11日以上のケースも)

3つすべてを満たしたとき初めて随時改定の対象です。1つでも欠けると届出は不要です。

特に②の「2等級以上」がポイントです。少し時給を上げた程度では差が2等級に届かないことが多く、随時改定の対象にならないケースも多いです。一方、最低賃金の改定幅が大きい年や、パートをフルタイムに登用したときは2等級を超えやすいため、確認が必要になります。


具体的な流れ

月額変更届の計算・確認をするほっともっとオーナーのイメージ

随時改定が必要と判断した場合の作業は4つのステップです。

① 固定的賃金の変動月を特定する

昇給・時給変更・手当の新設などが「いつから」適用になったかを確認します。変動が起きた月の翌月から3ヶ月間の報酬を集計対象にします。

② 変動後3ヶ月の報酬を集計・平均する

変動月の翌月から3ヶ月分の報酬(支払基礎日数17日以上の月のみ)を集計し、平均額を計算します。通勤手当なども含めて算定します(算定基礎届と同じルール)。

③ 現在の等級と比較する

算出した平均額を等級表に当てはめ、現在の標準報酬月額と比べます。2等級以上の差がある場合は月変の対象です。

④ 月変を作成・提出する

「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」を作成し、所轄の年金事務所へ提出します。

💡 新しい標準報酬月額はいつから適用?

変動月から数えて4ヶ月目の1日から適用されます。例えば10月に時給を引き上げた場合、11月・12月・翌年1月の3ヶ月を集計し、翌年2月1日から新しい標準報酬月額が適用されます。月変の提出は、3ヶ月分の給与が確定した後(1月の給与確定後)に行います。


算定基礎届との違いを整理する

似ているようで仕組みが異なる2つの手続きを比較します。

手続き タイミング 対象者 適用開始
算定基礎届 年1回(7月10日) 全被保険者 9月1日〜翌年8月31日
月変(随時改定) 3つの条件を満たしたとき随時 条件を満たした方のみ 変動月から4ヶ月目の1日

算定基礎届は「毎年7月」という固定の締め切りがあるため意識しやすいですが、月変は「条件を満たしたとき」が起点なので、給与計算の中でタイミングを見落としやすいのが特徴です。


ほっともっとでよくある場面

随時改定が発生しやすいのは、次のような場面です。

① 毎年10月の最低賃金改定

最低賃金は毎年10月に改定されます。まとめて時給を引き上げたとき、改定後の給与が現在の標準報酬月額から2等級以上高くなる従業員には随時改定が必要です。改定幅が大きい年ほど対象者が出やすく、複数名の確認作業が発生します。

② パートをフルタイムや正社員に登用したとき

勤務時間が増えて月収が大きく上がる場合、2等級以上の変動が生じやすいです。登用のタイミングで月変が必要かどうかを確認する習慣をつけておくといいです。

③ 手当を新設・廃止したとき

通勤距離が変わって通勤手当が増えた場合や、新たな手当を設けた場合も対象になることがあります。「少しの変化だから」と思っていても、積み重なると等級が変わることがあります。


自分でやるとどこが大変か

月変は年度更新や算定基礎届と違って「決まった時期」がありません。発生したタイミングで気づいて動く必要があるため、見落としのリスクがあります。

① 「誰が対象か」の把握が手間

時給を一斉に上げた場合、全クルーの中で2等級以上の変動が生じる人を一人ずつ確認しなければなりません。等級表と照らし合わせて「この人は対象か」という計算を繰り返す作業は、従業員数が多いほど負担になります。

② 給与計算の流れの中で見落としやすい

算定基礎届は「毎年7月に出すもの」と意識できますが、月変は「発生したとき」が起点なので、昇給・時給改定のたびに「月変が必要か確認する」という意識を持ち続ける必要があります。忙しい時期にはこの確認が後回しになりがちです。

③ 3ヶ月後に届出するという時間差がわかりにくい

昇給が起きた月にすぐ届け出るわけではなく、3ヶ月後に給与が確定してから提出します。この「3ヶ月待つ」という流れが直感的でなく、タイミングを間違えやすいポイントです。


給与計算代行でまとめて任せる

給与計算代行で社会保険手続きを任せるオーナーのイメージ

年度更新・算定基礎届は「毎年7月」という締め切りがあるのでスポット代行が使いやすいですが、月変のような「発生したら動く」手続きは、給与計算代行サービスに含めるのが最も漏れが少なくなります

AILLコンサルティングの給与計算代行では、月次の給与計算だけでなく、月変などの随時発生する社会保険手続きも対応しています。昇給・時給変更のタイミングで「これは月変が必要か?」という判断ごと任せられるので、見落としの心配がなくなります。

給与計算代行の対応範囲(例)
毎月の給与計算・給与明細の発行
入退社時の社会保険・雇用保険の加入・喪失手続き
昇給・時給変更時の月変届(随時改定)の判断・作成
年次手続きのサポート(算定基礎届・年度更新)

「月変が必要なタイミングかどうかわからない」という状態で放置するのが一番リスクが高いです。気になることがあればお気軽にご相談ください。


こんなオーナーにおすすめ

  • 毎年10月の最低賃金改定でまとめて時給を引き上げている
  • パートをフルタイムや正社員に登用することがある
  • 月変の発生タイミングを見落とすのが心配
  • 算定基礎届・年度更新に加えて、随時の手続きもまとめて任せたい
  • 給与計算から社会保険手続きまで一括で外注したい

「毎月の給与計算だけでなく、こういう手続きも含めて全部お願いできますか?」というご相談が実は一番多いです。まずは何をどこまで依頼できるか、気軽にご相談ください

📋 給与計算代行のご相談、受け付けています

月次の給与計算から、月変・算定基礎届・年度更新などの社会保険・労働保険手続きまで、まとめてお任せいただけます。「何から始めたらいいかわからない」という段階でもご相談ください。

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まとめ

  • 月変(随時改定)は、年の途中で固定的賃金が変動し、標準報酬月額に2等級以上の差が生じた場合に必要な手続き
  • 3つの条件をすべて満たす場合のみ必要:①固定的賃金の変動 ②2等級以上の差 ③3ヶ月とも支払基礎日数17日以上
  • 新しい標準報酬月額は変動月から4ヶ月目の1日から適用される(例:10月変動 → 翌年2月1日適用)
  • 算定基礎届(年1回・9月〜)とは別の手続き。「条件を満たしたとき随時」が起点
  • ほっともっとでは毎年10月の最低賃金改定・登用時・手当変更時に発生しやすい
  • 届出先は所轄の年金事務所(e-Gov電子申請も可)
  • 見落とし防止には給与計算代行に含めるのが確実。AILLコンサルティングで対応しています