「せっかく採用したのに、また辞めた」
この繰り返し、本当にイヤになりますよね。求人費をかけて、面接して、研修して——それがまた振り出しに戻る。
エリアマネージャーとして100店舗以上を見てきた経験から言うと、定着しないお店には共通したパターンがあります。そしてそのほとんどは、給料や待遇とは関係ない部分にあります。今回は、パート・アルバイトが定着しない本当の理由と、今日からできる対策を話します。
「時給が低いから辞める」は本当か?

離職の理由として最初に思い浮かぶのが「給料」だと思います。でも実際のところ、給料が原因で辞めるケースは思ったより少ないです。
エリアマネージャー時代、辞めたクルーの話を聞く機会を出来る限り作っていました。「時給が高い別のお店に行く」という理由はもちろんありましたが、本音を深掘りすると——
- 「何をすればいいかわからなかった」
- 「覚えても褒めてもらえなかった」
- 「誰も自分のことを気にかけてくれていない気がした」
- 「シフトを急に削られた」
——といった理由でした。
「環境」や「関係性」に対する不満が、離職の引き金になっていることが圧倒的に多いのです。給料を上げるだけでは解決しない理由がここにあります。
定着しないお店に共通する3つのパターン

多くのお店を見てきた中で、定着率が低いお店には共通したパターンがありました。
パターン① 入って最初の1週間に放置される
新人クルーにとって、最初の1週間が一番不安です。「何をどこまで覚えればいいのか」「自分はちゃんとできているのか」——この不安に誰も応えてくれない状態が続くと、あっという間に「ここは自分には向かない」と判断されます。
さらに見落としがちなのが人間関係の不安です。「先輩クルーに聞いていいのかわからない」「自分だけ輪に入れていない気がする」——仕事の不安より、人間関係で先に限界を迎えるケースも少なくありません。入店後1週間のフォローと、周りのクルーとつながれる環境づくりが、定着率を大きく左右します。
パターン② 成長が見えない
「毎日同じことをやっているだけ」という感覚になると、モチベーションが下がります。特に若いクルーほど、「自分が上手くなっている」「任せてもらえることが増えた」という実感を求めています。これがないと、続ける理由が見つからなくなります。
パターン③ 「自分はここにいていい」と思えない
名前を呼んでもらえない、目を合わせてもらえない、頑張っても何も言われない——そういう小さな積み重ねが「自分はここで必要とされていない」という感覚につながります。
ボランティアを想像してみてください。金銭的な報酬がなくても、人は率先して参加します。なぜか。同じ想いを持つ人がいて、自分に「居場所」があると感じるからです。アルバイトも同じです。人は「居場所」があると感じる場所に留まります。時給がどれだけ高くても、居場所がなければ辞めます。逆に言えば、居場所さえあれば、多少の不満は乗り越えられるのです。
定着率を上げるために、今日からできること

では具体的に何をすればいいか。難しいことではありません。
① 入店後1週間、意識的に声をかける
「今日はここまでできたね」「これは上手くなったね」——評価でなくていいです。「見ているよ」というサインを送るだけで、新人クルーの安心感が全然違います。特に最初の3日間は、必ず一言声をかけることを習慣にしてください。
② 「次のステップ」を見せる
「レジができたら次は調理も覚えてみよう」「ここまでできたら時給を上げる」——先が見えると、人は続けようと思います。前回の記事で紹介したオールラウンダー化は、クルーにとっても「成長の道筋」が見える仕組みになります。
③ シフトを急に削らない
売上が低いからといって急にシフトを削ると、クルーは「自分はいらないんだ」と感じます。削る場合は事前に理由を説明する。この一手間が、信頼関係を守ります。シフト管理と定着率は、深くつながっています。
④ 名前を呼ぶ
当たり前のことに聞こえますが、バタバタしているとつい「ちょっと」「ねぇ」になりがちです。名前を呼ぶだけで、その人への関心が伝わります。定着率が高い店長ほど、必ずクルーの名前を自然に使っています。
「1人辞めると、いくら損するのか」を計算してみた
定着率について費用面から見てみましょう。
あるお店での実績をもとに計算すると、クルーが1人辞めるたびにかかるコストはこうなります。
| 辞めるタイミング | 損失額の目安 | 内訳 |
|---|---|---|
| 初日(4時間)で退職 | 約23,500円 | 研修費4,600円+募集費18,900円 |
| 2週間(32時間)で退職 | 約55,500円 | 研修費36,600円+募集費18,900円 |
| 1ヶ月(50時間)で退職 | 約76,000円 | 研修費57,100円+募集費18,900円 |
| 3ヶ月(200時間)で退職 | 約247,100円 | 研修費228,200円+募集費18,900円 |
募集費の月平均は約20,000円。さらに本気で採用したい月は60,000円以上使うこともあります。そこに研修での費用が加わってくる。
さらに、この表に載っていない「見えないコスト」もあります。先輩クルーが新人指導に使う時間、離職時のシフトの穴を埋める対応、残ったクルーの士気低下——これらは金額に換算しにくいですが、確実にお店に影響します。
調査したお店の1年間の損失は、防げた可能性のある離職だけで約148万円になる計算でした。「定着率を上げる」というのは、この損失を減らすことと同義です。
💡 最重要は「入店後8日間(30時間)」
30時間でひとつのポジションを習得し、戦力としてシフトに組み込めるようになります。裏を返すと、30時間を超える前に辞めると、かけた費用は100%損失になります。入店後8日間のフォローが、採用コスト管理で最も費用対効果の高い投資です。
「辞めにくい環境」より「辞めたくない環境」をつくる

定着率を上げようとするとき、「辞めにくくする」方向に考えてしまいがちです。でも本質はそこではありません。
「ここで働き続けたい」と思ってもらえる環境をつくること——これが全てです。
私自身、オーナーになってからクルーの定着に一番効いたと感じているのは、「ちゃんと見ている」を伝え続けることです。頑張りを無視しない。成長に気づいて声をかける。シフトの変更は誠実に伝える。どれも特別なことではありません。
そしてもう一つ。正社員化はクルーの定着に直接つながります。「ここで長く働きたい」と思っているクルーに正式な立場を用意することで、そのクルーが長く残るだけでなく、周りのパートクルーにとっても「ここは将来性がある職場だ」というメッセージになります。
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まとめ
- アルバイトが辞める理由は給料より「環境」や「人間関係」に対する不満が多い
- 定着しないお店の共通パターンは「放置」「成長させない」「居場所がない」の3つ
- 対策は「入店後1週間の声かけ」「次の目標を伝える」「シフトを急に削らない」「名前を呼ぶ」
- 定着率を上げることは採用コストの削減に直結する
- 目指すのは「辞めにくい環境」ではなく「辞めたくない環境」
- 正社員化はクルーの定着に直接つながり、周りへの「将来性のある職場」というメッセージにもなる
次回は「エリアマネージャーが教える繁忙期の乗り越え方」です。夏・年末など忙しい時期をどう乗り越えるか、話します。お楽しみに!