「ほっともっとの給与体系をプロが解説」AILLコンサルティング 給与計算#015

「店長の給料、いくらにすればいいんだろう」

初めて店長を登用する時、これは本当に悩みました。パートの時給は最低賃金を基準に考えられますが、店長・正社員の給与はどう設計すればいいか、教えてもらえる機会がほとんどない。

今回は、ほっともっとで21年間働いてきた経験をもとに、パート・店長・正社員それぞれの給与体系の考え方をまとめます。特に「正社員店長の給与設計」は、他では読めないリアルな話をします。


ほっともっとの雇用形態は大きく3つ

ほっともっと店長の給与設計を考えるオーナーのイメージ

まず全体像を整理します。ほっともっとの店舗で働くスタッフは、大きく3つの雇用形態に分かれます。

雇用形態 給与の形 主な特徴
パート・アルバイト 時給制 スタッフの大半。最低賃金の改定に合わせた見直しが毎年必要
店長(パート扱い) 時給制または月給制 オーナーによって設計が異なる。給与設計がモチベーションに直結する
正社員(店長) 月給制 責任の範囲が広がる。キャリアアップ助成金の対象になる

この記事で一番伝えたいのは「正社員店長の給与設計」です。パートの時給管理は日常的に関わる部分なのでイメージしやすいと思いますが、正社員の給与設計はオーナーによって大きく差が出る部分です。まずパートの注意点を簡単に触れてから、正社員の話に移ります。


パート・アルバイトの給与管理で気をつけること

ほっともっとのパート・アルバイト時給管理のイメージ

パートの時給は、毎年上がる最低賃金に合わせて見直しが必要です。「上げたいけど、利益を考えると上げにくい」——これがオーナーの本音ですよね。特に最近は最低賃金の上昇ペースが速く、毎年の対応が経営に直接響きます。

時給管理で特に注意したいのが「特定のクルーへの依存」です。

1日8時間を超えた勤務には割増賃金(通常時給の25%増)が発生します。「この人がいないと回らない」という状態になると、無意識に長時間入れてしまいがちです。でも結果として割増コストが積み重なり、さらに万が一その人が怪我や体調不良で抜けると、シフトが一気に崩れるリスクも抱えることになります。

特定の一人に頼るのではなく、複数のクルーがある程度まわせる体制を作ることが、人件費管理とリスク管理の両面で重要です。クルーのオールラウンダー化(シフト管理の記事参照)が、ここでも効いてきます。


店長を月給制にするときの落とし穴

ほっともっとの給与体系を考えるオーナーのイメージ

店長を月給制にする場合、「みなし労働時間」を知らないと未払い残業のリスクがあります。知らないオーナーが多い部分なので、丁寧に説明します。

月給制にすると「残業しても給与は固定」と思いがちですが、それは就業規則に「1ヶ月○時間分の時間外労働を含む」と明記している場合だけです。この設定がなければ、月給はあくまで「所定労働時間分の賃金」にすぎず、それを超えた分は別途残業代を支払う義務があります。

具体的に言うと——

  • 所定労働時間:1日8時間・月22日=月176時間
  • 実際の勤務:月196時間(20時間超過)
  • この20時間分の割増賃金(25〜50%増)を別途支払う必要がある

飲食店の店長は「ちょっと残って作業」が日常的に発生します。「だいたい月30時間分の時間外を含む」と就業規則に明記して、その分を月給に組み込む設計にしておくことで、このリスクを避けられます。ただしみなし時間を超えて働かせた場合は、超過分の支払い義務は残ります。

このあたりは就業規則の整備と一体で考える必要があります。AILLコンサルティングでは、正社員化に合わせた就業規則テンプレートもご提供しています。


正社員店長の給与設計——ここが一番重要

正社員店長の給与体系・利益折半の仕組みを説明するイメージ

ここからが本題です。あるお店での正社員店長の給与設計を、そのままお伝えします。

就任時の月給は25万円。3年間固定にしています。ただし、昇級出来る余地がある設定です。年2回、固定の賞与もあります。

「3年固定」と聞くと、モチベーションが下がるんじゃないかと思われるかもしれません。でも私は逆だと考えています。

「最初から最大限上げない」ことが、長期的なモチベーション管理のカギです。

よくあるパターンが、就任時に「頑張ってくれているから」と高い給与を設定してしまうケースです。気持ちはわかります。でもそれをやると、翌年・再来年に「もっと上げてあげたい」と思ったときに余地がなくなる。毎年同じ金額が続くと、店長は「これ以上上がらないんだ」という閉塞感を感じやすくなります。

就任時は少し抑えた設定にして、毎年少しずつ上げていく仕組みを最初から設計しておく。「去年より上がった」という実感の積み重ねの方が、モチベーションの維持につながります。しかも就任から3年間の総支給額も、最初から高く設定するより安く済みます。

💡 昇給の「余地」を設計に組み込む

店長給与を設定するときは、「3年後にいくらまで上げられるか」を先に決めてから、就任時の金額を逆算するのがおすすめです。就任時→1年後→3年後のゴールを決めておくと、昇給の話し合いもスムーズになります。

さらに、私がお勧めしている「利益折半」の仕組みについてもお伝えします。

ほっともっとのフランチャイズ契約は3年です。店長への特別賞与として、「3年後の契約更新時に合わせて、3年間の税引き後利益の合計を折半する」としています。

なぜ「3年間の合計」で折半するのか。1年目から毎年折半にしてしまうと、最低賃金が毎年上がる中で利益が出にくい年に「頑張ってもどうせ赤字だから、頑張らない」という問題が起きます。一方で3年間の合計で折半する設計にすれば、利益が出た年・出なかった年を平均化できる。店長は「赤字の年でも頑張らないと、今までもらえるはずだった金額が減る」という気持ちになります。

これはオーナーと店長が「同じ船に乗っている」という意識を作る仕組みでもあります。「いかに利益を出すか」を店長自身が考えるようになる。そのための設計です。

項目 内容
就任時月給 25万円(3年間固定)
昇給余地 最大28万円
賞与 年2回(固定)
特別賞与 3年間の税引き後利益合計をオーナーと店長で折半(契約満期に合わせて)

この設計は、「給与を払うだけの雇用関係」ではなく、「一緒にお店を作っていくパートナー関係」を目指したものです。正社員化にかかるコスト増はキャリアアップ助成金(1人あたり80万円)でカバーできます。詳しくは正社員化コースの記事をご覧ください。

📋 給与体系の設計・見直しもご相談ください

「店長の給与をどう設定すればいいか」「正社員化のタイミングで給与体系を整理したい」——AILLコンサルティングでは給与計算代行だけでなく、給与体系の設計についてもご相談に対応しています。

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まとめ

  • パートの時給管理では特定クルーへの依存に注意。8時間超の割増コスト+離脱リスクを防ぐために複数パートのオールラウンダー化を進める
  • 月給制の店長にはみなし労働時間を就業規則に明記しないと未払い残業のリスクがある
  • 店長給与は最初から最大限渡さない。昇給の余地を残した設計が、長期的なモチベーション管理とコスト管理につながる
  • 正社員店長には年2回の賞与+3年間の利益折半という設計で、オーナーと店長が同じ船に乗る意識を持たせる
  • 正社員化のコスト増はキャリアアップ助成金(80万円/人)でカバーできる

次回は「オーナー1年目が知っておくべきお金の話」です。「売上はあるのに手元にお金が残らない」——その理由と、1年目だからこそ動いておくべきお金の話をします。お楽しみに!