「オーナー1年目が知っておくべきお金の話」AILLコンサルティング 代表コラム#016

「売上はそこそこあるのに、手元にお金が残らない」

オーナー1年目のあるある話です。私もそうでした。サラリーマン時代とは違い、労働保険料や消費税の支払いなど、初めてのことが次々と出てきます。なんでも自分でやらなければならないので、心に余裕がなくなる。そうなると、お金の全体像を把握する余裕もなくなっていきます。

「なぜ手元にお金が残らないのか」の構造を理解するだけで、経営の見え方が変わります。まずそこから始めましょう。


「売上」と「手元に残るお金」は別物

オーナー1年目のキャッシュフローに悩むほっともっとオーナーのイメージ

まず最初に理解してほしいのが、売上・利益・キャッシュの3つの違いです。

言葉 意味
売上 お客様からいただいた金額の合計
利益 売上からすべての経費を引いた残り。「帳簿上の儲け」
キャッシュ(手元資金) 実際に口座や手元にあるお金。利益とは一致しないことが多い

「勘定合っても銭足らず」——これが起きる理由はいくつかあります。

① 税金・保険料の支払いが急に来る
消費税・労働保険料・法人税は、売上が発生した月とは関係なくやってきます。「先月までは調子よかったのに、急に口座が苦しくなった」という原因の大半がこれです。

② 売上が上がるほど原価・人件費も増える
ほっともっとのロイヤリティは月8万円の固定です。ただし原価(食材費)と人件費は売上に連動して増えます。売上が高い月ほど食材も多く仕入れ、人も多く入れる。「売上が高い月ほど忙しくてしんどかったのに、手元に残らない」という逆転現象が起きやすいのはこのためです。

③ 設備の修繕・備品交換などの突発費用
冷蔵庫が壊れた、フライヤーが故障した——こういった突発的な出費が、利益を一気に削ります。心も削られます。


ほっともっとの「固定費」を把握する

ほっともっとフランチャイズの固定費構造を示すイメージ

オーナー1年目が最初に把握すべきなのが、毎月必ず出ていく「固定費」の総額です。売上が少なくても必ず出ていくお金がいくらあるかを知ることが、経営の土台になります。

ほっともっとの場合、主な固定費はこうなります。

  • ユニット料(家賃・リース料など)
  • ロイヤリティ
  • 販売促進費
  • 支払手数料

これらを合計した「月の固定費」を把握していれば、「今月は最低いくらの売上が必要か」という損益分岐点が見えてきます。損益分岐点を下回った月は赤字です。感覚ではなく数字で把握することが、経営判断の精度を上げます。

💡 「固定費÷粗利率」が損益分岐点売上

計算式はシンプルです。たとえば固定費が月100万円、粗利率が50%なら、損益分岐点売上は200万円。この売上を超えた分が利益になります。まずは自分のお店の数字を当てはめてみてください。


税金の「後払い」に備える

税金の準備をするほっともっとオーナーのイメージ

オーナー1年目で一番びっくりするのが、税金の額と支払いタイミングです。

個人事業主の場合、所得税・住民税・消費税はまとめて年に1〜2回支払います。「今年1年で300万円の利益が出た」という場合、所得税・住民税・消費税を合わせると、100万円以上の支払いになるケースもあります。これを知らずに使ってしまうと、支払い時に口座が空になります。

対策はシンプルです。毎月手元に残ったお金の30〜35%を「税金用口座」に別で積み立てておくだけです。面倒に感じるかもしれませんが、この習慣を持っているオーナーと持っていないオーナーでは資金繰りが大きく変わります。

また、消費税についても注意が必要です。平均月商600万円の場合、年商にすると7,200万円になります。売上1,000万円を超えると消費税の課税事業者になるため、ほっともっとのオーナーはほぼ確実に対象です。開業翌年から消費税の支払いが発生することを前提に資金管理をしてください。


助成金は「やっておけばよかった」では取り返せない

オーナー1年目のお金の話で、一番伝えたいのが助成金のことです。

私自身、開業当初は「助成金は自分には関係ない話」だと思っていました。サラリーマン時代とは違い、労働保険料の支払い、年末調整、クルーの労務管理……初めてのことが次々と押し寄せてくる。なんでも自分でやらなければならないので、心に余裕がなくなっていく。そうなると、助成金のことまで頭が働かないんです。

でも開業して5年目のある日、同じほっともっとのオーナーから「あいちゃん、キャリアアップ助成金、申請してる?」と聞かれて、初めてその存在をちゃんと知りました。調べれば調べるほど、「これは自分にも使えた。なぜ誰も教えてくれなかったんだ〜」という悔しさがありました。

そしてもう一つ致命的なことがあります。助成金は事後申請ができません。時給を上げてから「あ、申請しよう」では遅い。正社員にしてから「申請しよう」では遅い。必ず事前に計画書を提出しておく必要があります

「後からやっておけばよかった」と思っても、取り返せないのが助成金です。この経験が、AILLコンサルティングを立ち上げた起点になっています。同じ思いを他のオーナーさんにしてほしくない——それだけです。

慣れてきたら自分で申請すればいい。でも最初は、勉強も兼ねてプロのコンサルに任せる方が確実です。手元に100%残るわけではありません(約80%)。でも成功報酬型なので手元の資金を使うことはありません。私には1円も手に入れることが出来なかったお金です。

詳しくはキャリアアップ助成金の記事をご覧ください。

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まとめ

  • 売上・利益・キャッシュは別物。「利益が出ているのに手元にない」のは構造上当たり前に起きる
  • 税金・各種保険料は後払い。毎月の利益の30〜35%を税金用口座に積み立てる習慣を持つ
  • 固定費の総額を把握することで、損益分岐点売上が見えてくる
  • 助成金は事後申請不可。「やっておけばよかった」では取り返せない。1年目こそプロに任せて確実に受け取る

次回は「フランチャイズ経営で後悔しないための人件費管理」です。「人件費を抑えるために自分が入る」——これ、やっていませんか?月200時間入店しているオーナーが陥る悪循環と、その抜け出し方をお伝えします。お楽しみに!