「飲食店の数字は責任追及ではなく改善のために見る」AILLコンサルティング ブログ#040

「なんでこんなに廃棄が多いの?」

あるとき、週次の数字を確認しながら、クルーにそう聞いたことがあります。責める気持ちはなかった……と言いたいところですが、正直ちょっとありました(笑)

でもそのとき、クルーの顔が一瞬固まったんです。あの表情が忘れられなくて。

数字を見せることが、人を萎縮させる行為になっていた。そのことに気づいてから、私の数字との向き合い方が少しずつ変わりました。今日はその話をさせてください。


「数字を見ると誰かのせいにしたくなる」は自然な感覚

週次の数字を確認するほっともっとオーナーのイメージ

飲食店を経営していると、日次・週次の数字を毎日のように見ます。売上、廃棄、労働時間……。数字が多い仕事ですよね。

そういった数字に「悪化」が見えたとき、多くの人は「誰が何をしたのか」という方向に意識が向きがちです。私もずっとそうでした。

でも実はこれ、「数字で責める」という状態になっています。

意図してやっているわけじゃないのに、受け取る側のクルーには「詰められている」と感じさせてしまう。そのうち、数字を見せると現場の空気が重くなる、というループに入ります。

こうなると、クルーは数字を「自分を評価される道具」として捉えるようになります。すると、問題が起きても「報告すると怒られる」「なるべく言いたくない」という空気が生まれてしまいます。

現場で何が起きているかを一番先に知っているのは、その場にいるクルーです。その人たちが何も言えなくなると、オーナーには情報が上がってこなくなる。数字を見て責めれば責めるほど、見えなくなるものが増えていくんです。


数字は「犯人」じゃなく、「現実」を映しているだけ

では、廃棄が多いという数字が出たとき、どう考えればいいのか。

まず意識したいのは、数字は「事実の記録」であって、「誰かの失態」じゃないということです。

ここで一度、店舗の数字を見る順番を整理しておきます。重要度の高い順に確認していくと、現場のどこに問題があるかが見えやすくなります。私の優先順位は次の通りです。

優先順位 項目 ポイント
1位 売上 客数・客単価の動向がすべての起点
2位 原価 廃棄ロス・不明ロスを含む。FL比率の約半分を占める
3位 人件費 18〜23%が目安。シフト管理に直結する
4位 水道光熱費 季節・商品構成の影響を受けやすい
5位 消耗品 ペーパータオル・手袋など。地道に積み上がるコスト

特に注意したいのが2位の原価です。廃棄ロスも不明ロスも、ここに含まれます。原価率が上がっていれば、まず廃棄・不明ロスに目を向けるのが基本の流れです。ただし数字だけ見て「なんで!」と言っても、クルーは謝ることしかできません。謝っても廃棄は減らないし、原価率も下がらないんです。

大事なのは、数字の変化を「事実」として受け取ること。「この数字が出た、ということは何が起きていたんだろう?」という問いに変えることだと思っています。


「なぜ」と「どうすれば」が改善の入口

改善のために数字を使うとはどういうことか。私が意識するようにしたのは、「誰が」ではなく「なぜ」「どうすれば」という問いに変えることです。

改善のための数字の見方 3ステップ

① 数字の「結果」を確認する(廃棄が増えた、人件費率が上がったなど)
② 「なぜそうなったか」背景を探る(クルーに聞くことも大事)
③ 「次はどうすれば変わるか」を一緒に考える

たとえば——

廃棄が多かった → なぜ? → 月曜の客数が想定より少なかった → どうすれば? → 日曜の仕込み数を修正する、または仕込みのタイミングを遅らせる

こういう流れで考えると、数字は「責める材料」から「改善のきっかけ」に変わります。

もう一つ大事なのは、この問いをオーナーだけでやらないことです。現場の細かい事情を知っているのは、その場にいたクルーです。「なんで廃棄が多かったと思う?」と聞いてみると、オーナーには気づけなかった理由が出てくることがよくあります。

「月曜は近くの工場が休みで、いつもと客層がちがった」
「先週は新商品の関係で商材の配置を変えたら、解凍の見落としがあってロスが出た」

こういう話は、数字だけ見ていても絶対わかりません。


数字をオープンにしたら、現場が変わった

クルーと一緒に数字を確認するほっともっとオーナーのイメージ

試しに、廃棄の数字を毎週クルーと一緒に確認する時間を作りました。「こんなに出てる、誰のせい?」ではなく、「先週の廃棄こんな感じだったよ、何か気づいたことある?」という話し方で。

最初はクルーも戸惑っていましたが、1〜2週間経つと変化が出てきました。

クルー自身が「今日、在庫がこれだけ残ってるから仕込み量を少し控えましょうか」と提案してくれるようになったんです。

これ、本当にうれしい変化でした。数字を「自分ごと」として捉えてくれている証拠だから。

責めるために見せていたときは、クルーは数字から目を逸らしていました。改善のために一緒に見るようになってから、クルーが数字を主体的に使い始めた。同じ数字でも、見せ方・使い方次第でこれだけ変わります。

変化のポイント

「誰がやった?」という問いを発し続けると、クルーは数字を「評価ツール」として見るようになります。「なぜ?どうすれば?」に変えると、数字は「改善のための共有情報」になります。この違いは、現場の動き方に大きく影響します。


数字の意味は、オーナーの使い方次第

改善サイクルに取り組む飲食店の現場イメージ

飲食店を経営する上で、数字は避けて通れません。売上・廃棄・労働時間……毎日数字と向き合う仕事です。

その数字を「誰かを責める材料」として使うか、「現場をよくするための手がかり」として使うか。どちらになるかは、オーナーの見方次第です。

数字で責めると、クルーは萎縮して情報を出さなくなります。改善のために使うと、クルーが主体的に動き始めます。

私自身、まだ完璧ではありません。数字を見てつい「なんで?」と言いたくなる瞬間は今もあります(笑)でも「この数字の背景は何か」を考えるようになってから、現場との会話が確実に変わりました。

数字は責任を問うためにあるわけじゃない。飲食店をもっとよくするための、手がかりです。

そう思ってもらえると、日々の数字との向き合い方が少し変わるかもしれません。ぜひ一度、「なぜ?どうすれば?」という問いで数字を見てみてください。


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まとめ

  • 数字を「誰のせいか」という視点で見ると、クルーが萎縮して情報が上がらなくなる
  • 売上・廃棄ロス・不明ロス・労働時間の変化には、必ず「背景」がある。背景を無視して責めても改善につながらない
  • 「誰が」ではなく「なぜ」「どうすれば」という問いに変えるだけで、数字は改善の手がかりになる
  • クルーと一緒に数字を確認する習慣が、現場の主体性を育てる
  • 数字の意味はオーナーの使い方次第で大きく変わる

数字は責任追及のためにあるわけじゃない。飲食店をもっとよくするための手がかりです。その視点を持てると、日々の数字との向き合い方が変わり、現場も少しずつ動き始めます。