「また求人、出さないといけないのか……」
店舗を経営していると、常に誰かが辞めていく感覚があります。採用が終わったと思ったら、別の誰かの離職と、また次の採用。その繰り返しです。
「採用って、どのくらいお金かかるの?」と聞かれることがあります。
今回は店舗を経営してきた私が、実際に集計・計算した数字をもとに、採用コストの本音をお話しします。
1人の採用に、いくらかかっているか計算してみた

「そんなにかかってないかな」と思っていた時期が、私にもありました。でも実際に計算してみたら、ちょっと固まりました(笑)
採用コストは大きく「募集費」と「研修費」の2つに分かれます。まず募集費(求人広告費)の実績は1社平均18,900円でした。募集費の合計は、ある18ヶ月間で376,500円で、月平均にすると20,917円です。
「毎月2万円。まぁそんなもんか」と思いますよね。でもここに研修費が加わります。クルーの研修時給は1,141円(2026年7月現在)。1日4時間勤務として、辞めるタイミングによって損失額がこれだけ変わります。
| 退職タイミング | 研修費 | 募集費(1社) | 合計損失 |
|---|---|---|---|
| 初日(4時間) | ¥4,564 | ¥18,900 | ¥23,464 |
| 2週間(32時間) | ¥36,512 | ¥18,900 | ¥55,412 |
| 1ヶ月(50時間) | ¥57,050 | ¥18,900 | ¥75,950 |
| 3ヶ月(200時間) | ¥228,200 | ¥18,900 | ¥247,100 |
1人辞めると、最大で247,100円。見て少し固まりました(笑)
3ヶ月育てて辞めた場合、募集費18,900円が合計損失に占める割合は8%以下です。残り92%は研修費。目に見えている2万円の求人費よりも、育てた人が辞めることで消える研修費のほうが圧倒的に大きいんです。「求人広告費の高い月は大変だ」と感じがちですが、本当のコストはそこじゃないんですよね。
お金以上にかかる、「時間コスト」の話

実はお金より深刻なのが、時間です。
採用の流れを一つひとつ追うと、こんな時間がかかります。
- 求人票の作成・更新:10分〜1時間
- 応募者への連絡対応(メール・電話):応募1件あたり3分
- 面接(1人あたり):準備含めて1時間
- 採用決定後の入社手続き・労働契約書作成:1時間
- 初日〜数日の研修対応:20時間
これ全部、「他の仕事を止めてやっている時間」です。
面接等の時間は「誰かにお金を払ってシフトを補填している時間」でもあります。1人の面接・採用で2時間拘束されるとしたら、その間のシフト費用も実質的なコストに含まれるわけです。
採用コストって、求人広告費だけじゃない。時間もお金も、両方かかっている——これが店舗を経営してきて実感したことです。
失敗の本音:55,412円が、消えた
これは少し心が痛い話ですが、せっかくなので書きます(笑)
うちで実際にあったのが、2週間で辞めたケースです。研修費36,512円+募集費18,900円で、合計55,412円が退職と同時に丸ごとなくなりました。
退職理由は「思ってたよりきつかった」でした。うーん、まぁそうですよね(笑)
でもこれ、笑って流せない話でもあって。お金だけでなく、面接・採用手続き・研修に付き合った時間もすべて「0」です。次の採用活動を、また1からやり直さないといけない。そのダメージは、お金よりも精神的なほうが大きかったりします。
もう一つ多いのが、面接の約束をした人が来なかったというケースです。いわゆる「面接バックレ」です。
飲食業界あるあるかもしれませんが、これが地味にメンタルにきます(笑)1時間シフトを空けて待っていたのに、連絡もなく来ない。予定していた他の仕事もそのぶん後ろ倒しになる。
こういう経験を何度も繰り返してきて、「採用は水ものだ」ということを痛感しています。どんなにお金と時間をかけても、必ずしも報われるわけじゃない。
採用コストを減らすには、「採用後」に目を向ける

採用を「やめる」という選択肢は、残念ながらありません。クルーが足りなければ、お店が回らないので。
ではどうするか。私が意識するようにしたのは、「採用にかける労力を最小化しながら、定着率を上げる」ことです。
18ヶ月間の離職について振り返ってみると、離職の合計は19件でした。そのうち「防げた可能性のある離職」が6件、「対応次第で変わったかもしれない離職」が3件ありました。この9件を防げていたら、推定で約200万円の損失を回避できた計算になりました。
クルーが辞めるとき、「突然」に感じることが多いです。でも実際は「突然」じゃないことがほとんどで、小さなサインを見逃していることが多い。振り返るといつもそういうことなんです。
採用コスト削減のポイント
採用にかかるコストを減らすためにできることは2つ。①求人の効率化(応募率の低い月の求人を見直す)と、②定着率を上げる(辞める人を減らして採用頻度を下げる)。後者のほうが、長期的に見てはるかに効果が大きいです。
「採用をがんばる」より「辞めにくいお店にする」ほうが、コスト削減につながる。これが店舗を経営してきてたどり着いた考え方です。
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まとめ
- クルーが辞めると、退職タイミングによって最大247,100円(研修費228,200円+募集費18,900円)の損失が発生する
- 募集費は全体の8%以下。本当のコストは研修費で、求人広告費の10倍以上かかっている
- 18ヶ月間の離職19件のうち、防げた可能性のある離職は9件・推定損失約200万円
- 採用コストを下げるには「採用をがんばる」より「定着する現場にする」ことが近道
- 辞めにくいお店にすることが、採用頻度を下げて経費削減につながる